超円安 ?本当ですか?

超円安

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「訪日客が増えている理由の一つは、円安」
「だから、円高になれば、訪日客は減ってしまう」

といった話を聞いたことはありませんか?
2017年から円ドル為替レートが110円前後で推移しており、100円代になると、「円高」と言われます。
一方で、有識者は「国内外の物価水準を考慮すると、実は今、 超円安 」と指摘します。

実際のところはどうなのでしょうか?


実際の物価水準に合わせた為替レート

日本はデフレに悩まされ続けてきました。
その結果が、国内外の物価水準の差に表れている、のかもしれません。
有識者の根拠になっている「日銀の実効実質為替レート」とは、分かりやすく言えば「対外競争力とインフレや物価を考慮した為替レート」ということです。
今回は、2000年~2017年の実効実質為替レートの推移を、「2000年の円ドル為替レートと同水準」と仮定して2017年まで引き直したらどうなるか、を調べました。
言い換えれば、2000年以降、国内外の物価変動などを踏まえて、「訪日外国人にとってどれくらい日本の物価が安いのか」がわかることになります。


やはり 超円安 は本当だった

グラフにしてみたら、驚きました。
2000年から2008年リーマンショックまでの間に、その差はかなり広がっていました。
そして、現在でもその格差はさらに拡大しつつあります。
感覚的な為替レートは、2000年当時から比べると2018年1月現在、「180円からさらに円安に振れている」ことになります。

なんとその差は、実に約1.6倍。逆に言えば、日本は4割近く安い。

確かに海外へ出張すると、各国の物価が以前より格段に上がったように感じられます。
そう言えば、海外から来日した友だちは、「日本の商品は安いね!」と言っていました。


では、これをどう見るか?

これなら多少の円高になっても、物価格差があるから、そんなに影響しないように思えます。
特に訪日客にとっては、自国の物価感覚のまま来日するので「日本商品は、以前より安い」というイメージを持つのではないでしょうか。

一方で、輸出では少し事情が異なるかもしれません。
例えば、食品輸出では、現地で国内小売価格の約2~3倍の値段で売られており、仮に円高になれば、輸送経費や中間マージンなどもスライドするでしょうから、結局、現地販売価格は高くなってしまいます。

販売価格

つまり、「多少の円高は、インバウンド訪日客消費には影響を与えないが、輸出には影響する」ということになりそうです。


インバウンド訪日客消費がマーケティングにつながる

この「超円安」の恩恵を、訪日客が一番享受しているように思えます。

そして、多少円高に振れたとしても訪日客の増加傾向が途絶える、ということはまず無さそうです。
(もちろん、朝鮮半島の緊張が高まったりすると、影響を受けるでしょうが。)

2017年の訪日客数は2869万人、日本の人口の約22%、伸び率は19%になっています。
それに合わせて、訪日客の消費額は4兆4161億円、輸出額の5.6%、伸び率も18%になりました。
成長著しい中国の経済成長率でも6.8%ですから、まさにインバウンド訪日客消費はブームになっていると言っても良いかもしれません。

このように訪日客が増えることで、海外の方が日本文化や日本独自の商品・サービスに触れる機会が増えているわけです。
つまり、食品だけにとどまらず、あらゆる日本の商品・サービスの輸出にとって、インバウンド訪日客は、絶好のマーケティング機会となります。
そう考えれば、実は、「海外輸出への近道は、インバウンド訪日客への対応」なのではないでしょうか。

ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
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