訪日外国人 旅行者(つまり、インバウンド)が増えてきています。
2015年は1973万人、中国景気のスローダウンの影響があっても、2016年上期の6か月間で1171万人になっています。(日本政府観光局より)
3月30日には、政府よりインバウンド目標値として、2020年に4000万人訪日が掲げられました。
これからも様々な対策が打たれていくと思います。
一方で、このインバウンドによって、どれだけ食品輸出が伸びていくのか?と疑問に思う方も多いでしょう。
今回は、その疑問に対して、ヒントになりそうなことをご紹介します。
実は、訪日外国人にとって「超円安」
インバウンド急増のきっかけは、いろいろとあるそうです。
外国人の駐在員や就労者の増加
アジア経済の成長
日本の観光ビザが取得しやすくなったこと
きっかけだけなら、このインバウンドのブームは、一過性のものでしょう。
しかし、どうやらそうでもなさそうなのです。
根底にある要因は、「超円安」です。
アジアはもちろんのこと、欧米主要国と比べても、日本の物価は据え置かれたまま。
その間、他国の物価水準は高まっています。
一方、ニュースで見ている為替レートは、それほど変動していません。
では、「物価水準を考慮した為替レート」は、どのくらいだと思いますか?
実は、驚くほどの「超円安」なのです。
詳細については、以下をご参考ください。
つまり、この「超円安」基調が変わらない限り、そしてそれはそう簡単に変わらないでしょうが、インバウンドのブームは、続いていくと思われます。
振り返ってみると、これまで「円高」のために、外国人旅行者数が増えず、低価格の日本食品などの輸出額が低迷していました。
それが知らない間に環境が変わり、大きなうねりになっている、ということなのです。
インバウンド=口コミ・マーケティング
さて。
食品輸出の観点から見れば、インバウンドは口コミ・マーケティングです。
・訪日した外国人が、口コミで日本食品と観光を紹介。
・現地で手に取り「懐かしい!これ、日本で食べて美味しかった」とコメント。
この相乗&蓄積効果が、じわじわと日本食品の輸出に影響を与えています。
つまり、インバウンドは、食品輸出額の先行指標とみなすことができる、ということです。
先行指標と言っても、具体的に「何年先行している」とは言えません。
むしろ、将来的なポテンシャルを示している、と考えてください。
日本の食品輸出の実態は?
農林水産省から発表されている食品輸出ランキングは以下の通りになっています。
(出典)農林水産省「2015年 農林水産物・食品の輸出額」
米国を除いて、トップ10はすべてアジア。
香港、台湾、中国、韓国、タイの順。
この数字の中には、加工食品の原材料も含まれるので、純粋に現地で消費されているものとは限りません。ご注意ください。
例えば、中国、タイ、ベトナム、フィリピンなどは、少し割り引いて考えると良いです。
では、インバウンドの実態は?
(出典)日本政府観光局(JNTO)「2015年 訪日外客数(総数)」
2015年は中国爆買に象徴されるように、中国のみならず韓国・台湾・香港の来日旅行者が増えています。
2014年からの伸び率は、中国107%、韓国45%、台湾30%、香港64%と異常です。
食品輸出ポテンシャルはどう考えればよいのか?
さあ、本題に入りましょう。
まず、米国への食品輸出額とインバウンドは、比較的安定しているものと仮定します。
それぞれ米国=100として数値化し、インバウンドに相当する食品輸出額を算出します。
さらに、「この期待する食品輸出額と現状の輸出額のギャップ=伸びしろ」が、「食品輸出ポテンシャル」とみなすことができます。(ちょっと荒っぽいですが。)
これをグラフ化すると次の通りになります。
現在の輸出額をベースに何倍に増やせるのか?
(出典)農林水産省「2015年 農林水産物・食品の輸出額」、日本政府観光局(JNTO)「2015年 訪日外客数(総数)」より試算
韓国・中国・台湾はもちろん上位ですが、以下の順でまだまだ輸出の可能性がある、ということです。
- インド 822%
- 英国 406%
- マレーシア 381%
- フランス 358%
- イタリア 345%
- インドネシア 332%
- 豪州 322%
想定通りでしょうか?
では、「輸出額」としてはどうでしょう。
食品輸出額はどこまで伸ばせるのか?
(出典)農林水産省「2015年 農林水産物・食品の輸出額」、日本政府観光局(JNTO)「2015年 訪日外客数(総数)」より試算
中国・韓国・台湾は、2015年の中国好景気の影響をもろに受けています。
そのため、軒並み1000億円以上の試算になっています。
今後の、中国景気のスローダウンを考慮すれば、少し控えめに見るべきかもしれません。
それでも最も食品輸出の優先順位が高い国であることは間違いありません。
- 中国 4,337億円
- 韓国 3,647億円
- 台湾 2,859億円
むしろ、アジアでは、タイ・豪州・マレーシア・フィリピン・インドネシアのポテンシャルは大きいと考えられます。
そして、欧州の英国、フランスもまだまだポテンシャルがあります。
- タイ 468億円
- 豪州 269億円
- マレーシア 234億円
- 英国 202億円
- フィリピン 183億円
- フランス 160億円
- カナダ 159億円
- インドネシア 149億円
このランキングの中には、インドがないぞ!と気がつかれた方は、さすがです。
成長著しいインドは、現在の輸出額そのものが13億円と低い(むしろ低すぎる!)ので、このランキングに現れてはきません。
要注意です。
インドの食品輸出ポテンシャルは、本来、額としてもかなり大きいはずです。
発展途上国は、都市部に注目
訪日外国人としては、発展途上国であればあるほど、富裕層の割合が高いと想定できます。
すると、訪日外国人の多い国の都市部は、特に重要でしょう。
- バンコック(タイ)
- クアラルンプール(マレーシア)
- マニラ(フィリピン)
- ジャカルタ(インドネシア)
そして、たぶんそれ以上に、インド都市部は重要です。
- バンガロール(インド)
- ニューデリー(インド)
あなたが狙っているのが、高級食品市場であるのなら、上記の都市部は特に注目すべきでしょう。
アジア主要都市部の富裕層の所得水準については、以下をご参照ください。
ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
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