2018年7月20日、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案が成立しました。
カジノ、国際会議、展示会など観光インフラを作り、新たな経済活動を生み、観光客も呼び込む狙いがあると言われています。
キーワードは、やはり「インバウンド」「観光」。
今回は、「 テーマパーク ・ニッポン」について考えてみたいと思います。
カジノ法の意味するところ
カジノ法の議論で、よく引き合いに出されるのが、ラスベガス。
ラスベガスは、カジノのあるホテルが有名です。
しかし、カジノだけではなく、さまざまなイベントや体験アクティビティも数多くあります。
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屋内では、
- ポップ・ロックなどのコンサート
- サーカス・手品・各種演芸などのショー
- ボクシングなどのスポーツ試合観戦
- 世界各国のグルメレストラン、バー
- 流れるプール、熱帯雨林のようなプールがあるホテル
- ショッピングモールやアウトレット
- 見本市、展示会、商談会
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屋外では、
- グランドキャニオン国立公園、ヨセミテ国立公園などが有名
- アンテロープキャニオン、レッドロックキャニオン
- フーバーダム、ミード湖での釣り、ジェットスキー
- 絶叫マシンや観覧車、遊園地など
つまり、ラスベガスを拠点として、自然・気候などを十分に活用し、観光とビジネスの両面で役立てています。
外国人富裕層が、数日、もしかすると数週間滞在しても満足できる観光コンテンツを持っています。
もちろん、私もカジノに100%賛成ではありません。
シンガポール、マカオでも観光振興というプラスの面の裏で、依存症やマネーロンダリングというマイナスの面もあると言われています。
例えば、ラスベガスを持つ観光先進国アメリカでも、ハワイは、州法でギャンブルが禁止されています。
その理由は「一般観光客に悪影響を与えて、客層が変化し、来訪数が減る可能性がある」とのこと。
幅広い客層をもてなすには、「ハワイの自然、海・ビーチ・山があれば十分」という考え方には、納得できる人も多いのではないでしょうか。
技術立国ニッポンはどこに?
一方で、日本の現状は、少子高齢化と人口減少という問題を抱え、未だ経済低迷を続けています。
90年代までは、高品質なものづくりが評価されてきた日本ですが、中国・韓国・台湾の追い上げによって、いつの間にか「攻め」から「守り」になっているような気がするのは、私だけではないでしょう。
「技術立国ニッポン」が当たり前だった頃は、さまざまな技術革新は日本のお家芸だったように思えます。
2005年頃、「シンギュラリティ」という言葉がもてはやされた時期がありました。
レイ・カーツワイル博士が提唱した「2045年にAIが人類の知能をを越える」という予測のことです。
彼の分厚い本の中で、「これからの産業を牽引するキーワード」として、ナノ、バイオ、ロボット(AI含む)を上げられていました。
その後、この3分野で世界各国で熾烈な競争が展開されています。
現在でも、新聞・TVでAIとロボットの話題は、何度となく取り上げられています。
さて、この3分野で、日本の現状はどうでしょうか。
ナノ分野では、日本も健闘している、と言われていますが、従来のものづくりとはかなり内容が異なりそうです。
私たちが誇りとしてきた「手触りの良いものづくり(技術)」とは、異質のものがあるようです。
イギリスが世界に売っているものとは!
10年以上前のことになりますが、イギリス人の友人とパブでビールを飲んでいるときに、「イギリスは何を世界に売っているか、知っているかい?」と尋ねられたことがあります。
友「イギリスは何を世界に売っているか、知っているかい?」
私「金融、観光。そして、背広かな?」
友「まあまあだな。実は、金融、観光、そしてロックだよ!ロックはイギリスの重要な輸出品目なんだ!」
片手にビール、片手をポケットに突っ込んで、にこにこ笑いながら、その友人は続けます。
友「じゃあ、日本は何を世界に売っているんだ?」
あなただったらどう答えますか?
ちょっと考えてみてください。
私は、こう答えました。
私「そりゃもちろん、機械、自動車、ものづくり(技術)だよ」
その時は、まだバブル崩壊後とは言え、日本はGDP世界2位。
ものづくり(いわゆるハイテク)は、まだまだ好調でしたから。
しかし、その時、「観光は重要な売り物なのだ」と初めて気付かされました。
当時、既に日本も少子高齢化と人口減少が問題にされていました。
いずれ日本のモデルとなるのは、「老いても美しいイギリス」なのではないか、そして「日本も観光を売り物にするだろう」と、自然に考えるようになりました。
イギリスは、日本と同じ島国であり、欧州大陸と離れて、プライドと孤高を保っています。
日本も「欧米社会の極東」に位置しており、成長著しいアジアにあってもその端にあります。
日本人は、世界でも特別なくらい「日本語」にこだわり、「独自の文化」を維持してきました。
イギリスは、世界標準語である「英語」を持っていて、日本とは比較できないかもしれません。
しかし、根っこの部分、自国の文化と言葉にこだわる点では、かなり似ているように思えます。
日本が世界に売れるものとは?
さて、もし仮に今、「日本が世界に売るものは?」と聞かれたら、あなたは、どう答えますか?
もちろん、「自動車、機械、航空宇宙、鉄鋼、などのものづくり(技術)」だと思われる人も多いでしょう。
私もその通りだとも思います。
私はたぶん、口ごもりながらも「自然、文化(和食を含めて)、観光」と答えると思います。
技術進歩は、日本に急速な経済発展をもたらしましたが、今やその恩恵はアジア各国に行き渡るようになりました。
問題は、「コピー可能かどうか」ではないでしょうか。
つまり、日本固有のもの、日本にしかないもの。
過去の長い時間の蓄積や、日本という「特別な場所」でしか成り立たないもの。
時間と人間が生み出す伝統・文化は、そうやすやすと真似できません。そして、お金では買えません。
私たちが「守り」から「攻め」に転じるのであれば、この「日本」を最大限に活用しない手はないでしょう。
ものづくり(技術)もハイテクだけで勝負するのではなく、日本固有の文化やおもてなし(ハイタッチ)を上手に融合させることで「簡単に真似できないオリジナル」につながるのだ、と思います。
テーマパーク ・ニッポン!
昨年、日本に住んでいる外国人の友人と話していたら、次のように言われました。
友「近い将来、日本はアジアの、そして世界のテーマパークになるよ。」
彼の友人は、北海道スキーを楽しむため、毎年3回家族で来日するとのこと。
日本の自然と四季と文化は、彼らにとって「何度でも味わいたい、日本でしか味わえない体験」とのことでした。
日本は、欧米社会から見れば「極東」とお話ししました。
その島国である日本は、大国であるアメリカ・中国・ロシアに挟まれ、成長著しいアジアの中でも「東端」として位置付けられています。
こんな国は、世界広しと言えども他にありません。
つまり、外国人から付かず離れずの距離に位置し、しかも独特の文化を持っている「異国」と考えられています。
未だに英語が通用しない、しかし高品質の自動車や電気製品を生み出す国。
スシとラーメンの国。
美しい富士山があり、スキーの北海道と南国の沖縄を持っている国。
日本を訪れたことのない外国人にとっては、ある意味「不思議な国」と思われているようです。
そして、日本を訪れたことのある海外顧客から、次のようにみられています。
「カッコイイ、センスが良い」
「活気や勢いを感じる」
「明確な個性や特徴がある」
「時代を切り拓いていく感じ」( 出典:木戸良彦「超日本製品論」日経BP社 )
いかがでしょうか。
日本には、「世界のテーマパーク」となる素質、意外性と自然と文化が満ちているように感じられないでしょうか。
テーマパークを目指すためには
もちろん、一朝一夕にテーマパークになれるわけではありません。
日本を「世界のテーマパーク」になるためには、まだまだやるべきことがたくさんあります。
- 各地の魅力を、海外の旅行者の目線で見直す
- 交通手段の標識・時刻表などをはじめとして、少なくとも英語併記、英語アナウンスを基本とする
- 自然・景観だけに頼っていては持ちません。
体験型観光コンテンツを開発する - 単にハイテク(技術)を追求するだけでなく、ハイタッチ(おもてなしなど日本の文化)を融合させる。
できれば、観光コンテンツに仕上げる
そして、「日本は世界のテーマパークになる」という意識を、一人一人が持つ。
想像してみてください。
外国人旅行者に優しい街づくり、
温かいおもいやりとおもてなしにあふれたサービス、
そして、美しい四季に彩られた日本の大自然。
日本の商品とサービスは、独特のストーリーを持ち、他国の商品・サービスと一線を画します。
海外販売価格で、価格競争に陥らない、日本というブランド。
10年後にはなるでしょうが、「メイド・イン・ジャパン」はハイテクを意味するのではなく、ハイタッチや日本文化を意味するのかもしれません。
それこそが、私たちが後世に伝えていくべき、揺るぎない日本ブランド(Japan Brand) になるのだと思います。
「世界のテーマパーク」を目指して、一緒にがんばりましょう。
ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
優れた日本の商材を国内、海外へ。
https://jbmarket.jp