インバウンドを 海外の販路開拓 に役立てる。
今回は最終回。
これまでに、外国人旅行者の考え方・動き方、口コミを使ったマーケティングなどについてお話してきました。
その総集編として、インバウンドを 海外の販路開拓 にどう役立てていくか、を具体的に提案します。
どうしてインバウンドが海外販売につながるのか?
そもそも「どうしてインバウンドが海外販売につながるのか?」
第1回で少し触れましたが、かんたんに振り返れば、以下のようになります。
- 海外顧客が「初めて見る商品」を手に取り、気に入り、定着するには時間がかかる。
- その点、興味を持って来日する外国人観光客には、ハードルが低い。
- 彼らは、SNSと口コミで個人的な体験と感動を発信。
(あたかも、あなたの商品やサービスの宣伝マン) - 直接、海外の最終消費者とファンを獲得できる。
海外の販路開拓 の3つの課題
これをわかりやすく整理してみましょう。
つまり、海外での販路開拓には、3つの課題があり、実はインバウンド対策が効果的である、ということです。
- 基礎知識の教育: 使い方、楽しみ方、レシピなど
- ブランドの確立: 商品・サービスの良さ・差別化
- 現地での流通 : 商流・物流の構築
仮に、狙うべき現地市場が決まり、現地へ商品・サービスを持ち込んでも、「(1)基礎知識の教育」や「(2)ブランドの確立」に、時間とコストがかかります。
大企業であれば、豊富なマーケティングや営業予算をふんだんに使って、
- 空中戦: TV・雑誌などの広告宣伝、芸能人の活用
- 電子戦: ネット広告宣伝、有名ブロガーの活用
- 地上戦: 現地営業員を配置しローラー営業
というアプローチも可能でしょう。
力のある中小メーカーなら、同じことができるはずです。
しかし、このような時空電子戦は、リスクが大きい。
むしろ、中小メーカであれば、大企業が真似しようとしてもできない、
- 個別対応 : 個々のお客さまを大切に
- ハイタッチ: ネットが苦手な「細やかなサービス」
- 温かさ : 人と人との温かな触れあい
こそが、こだわり外国人旅行者に響くのだと思います。
実は、この連載シリーズのポイントも、ここにあります。
もうお気づきのことと思います。
さきほどの3つの課題のうち、「(1)基礎知識の教育」や「(2)ブランドの確立」を、国内に居ながらにして行う秘策が、この「インバウンドの活用」なのです。
もちろん、実際に、現地市場に出てみても、(1)(2)の課題に取り組む必要が出てくるでしょう。
なぜなら、現地の大半の方は、日本のことをよく知りません。(香港・台湾のように、「訪日旅行」がほぼ当たり前になっている国を除きます。)
それでも、インバウンドで現地ファンを獲得していれば、(1)(2)の時間をかなり短縮できると思います。
「だったら、まず何から始めれば、良いんだ!」と思われるかもしれません。
ここで、具体的な手順を整理しておきましょう。
要約、インバウンドでブランドを確立する具体的な手順
これまでに「こだわり外国人旅行者の考え方・動き方」について、ざっくり大づかみしていただきました。
それを踏まえて、以下のような打ち手を叩き台として考えてみます。
その1 トリップアドバイザーへ登録
前回ご紹介した「トリップアドバイザー」は、外国人旅行者、特に欧米豪の旅行者がよく見ています。
まず、トリップアドバイザーに登録することから始めましょう。
手始めに、既に旅行者があなたの店舗や施設を登録しているか、を確認ください。
仮に、登録されていても大丈夫。
トリップアドバイザーに連絡して、所有者であることが確認できれば、情報登録の権利を持つことができます。
(少し事務手続きに時間がかかります。コストは無料。2018年現在)
その2 ホテルや観光案内所に協力していただく
外国人旅行者は、すべてを事前に計画して、来日するわけではありません。
滞在エリア、そして宿泊先、交通手段をまず決めます。
旅行テーマやこだわりテーマを持っていますが、旅慣れた外国人であれば、宿泊施設(ホテル)のコンシェルジュや観光案内所を活用します。
そこで次に、コンシェルジュや観光案内所に協力してもらいましょう。
あなたの会社の商品・サービス、そして店舗や施設を説明する英語チラシ(一枚もの)を作成してください。
もし参考となる手本が必要なら、観光案内所(インフォメーション)に置かれている英語チラシを入手ください。
この英語チラシは、ネイティブ(母国人)の翻訳が必要です。
できるだけ、アメリカ人やイギリス人の方に翻訳してもらってください。
海外に行った時に、変な日本語の説明などを見たことはありませんか?
たぶん、日本語を習った方が翻訳しているのでしょう。
「てにをは」や微妙な言い回しは、私達日本人に適いません。
そして、変な日本語を、かえって不審に思われるのではないでしょうか。
同じことが外国語にも当てはまります。
外国人ならではの、微妙な言い回しやニュアンスがあります。
いくら外国語が得意でも、現地に長期間住んでいても、微妙な呼吸や言い回しを学び取ることは難しいものです。
そのため、英語の翻訳であれば、生まれも育ちもアメリカ人あるいはイギリス人に、依頼することが重要です。
ただし、話し言葉の場合は、勝手が違います。
相手の印象(表情、しぐさ)からある程度の信頼関係を築くことができます。
英語がカタコトであっても大丈夫。ご心配なく。
この一枚もの英語チラシを、ホテル・宿泊施設や、外国人旅行者が立ち寄る観光案内所に置かせてもらうのです。
つい最近、ある有名なホテル・コンシェルジュの方に、
「一枚ものの英語チラシを作ったのですが、ご説明のお時間を頂くことは可能でしょうか?
そのチラシを置かせてもらえますか?」
と尋ねたところ、
「もちろんです。こちらからもお願いしたいところです。」
「海外からの旅行者が増えているので、ホテルのコンシェルジュは、皆さん、新しい体験イベントを探しています。
英語チラシがあれば、すぐにお渡しできるので、大変便利ですね。」
とのことでした。
旅行関係者でなくても、地元の体験イベントの主催者が説明に来たり、コンシェルジュを招待して実際に体験してもらうことも増えてきた、と仰るコンシェルジュの方もいました。
その3 外国人旅行者と友だちになる
さて、ある日、トリップアドバイザー、ホテルのコンシェルジュ、観光案内所で興味を持った、外国人旅行者が、あなたの店舗・施設・イベントを訪問します。
「英語を話せないよ!どうするんだ?」
とお困りの方もいらっしゃるでしょう。
「英語チラシは、きちんと翻訳してあっても、話す方がカタコトでは恥ずかしいよ」
チラシやパンフレットは、相手の表情が見えません。
そして、変な言い回しは、誤解や不信につながります。
しかし、話し言葉であれば、あなたの印象(表情、しぐさ、声のトーン)から、あなたの人となりを知ることができ、信頼関係を築くことができます。
仮に、英語がカタコトであっても、大丈夫。ご心配なく。
あなたの笑顔、真剣さ、思いやりの気落ちは、言葉以上に外国人の心に響きます。
「それでも心配だよ!」
と不安に思われる方は、最低限の説明を英語にしたパンフレットを作っておけば良いでしょう。
こちらも書類なので、できるだけ本場の外国人に翻訳してもらうことです。
https://www.jtf.jp/jp/useful/report_bk/price.html
(一般社団法人日本翻訳連盟)
また、ネットで検索すれば、リーズナブルなフリーランスの翻訳を手配できます。
さて、話を元に戻しましょう。
外国人旅行者と友だちになるためには、どうしたら良いでしょうか?
私が初めて海外に住み始めた頃、海外経験がとても長い恩師が、こうアドバイスしてくれました。
「英語ができないから、友だちができない?
かんたんだよ。
例え外国人でも、日本人と同じように接すれば、たちどころに友だちになれるさ!」
これはとても素晴らしいアドバイスでした。
その時の霧が晴れたような感動を私は今でも忘れません。
それからです。
この言葉を噛みしめながら、海外で仕事をしています。
そのおかげで、親友と呼ぶことのできる外国人の友だちを何人も持つことができました。
あなたも、外国人旅行者に、日本人の旅行者や友達と同じように接してあげてください。
言葉は、カタコトでも構いません。
あなたの真心はあなたの全てを通して相手に伝わります。
その4 良ければ口コミ評価を依頼する
トリップアドバイザーに登録しているのなら、徹底的にトリップアドバイザーを使いこなしましょう。
- トリップアドバイザー登録を店舗内などに掲載
- 一枚もの英文チラシ、パンフレット、カードに、あなたのページのQRコードを表示
- 店舗内にインスタ用スポットを設置し、写真を撮る
(旅行者のスマホやカメラで。あなたのカメラで。
できれば、あなたも一緒に取ってもらう) - 訪問してくれた方にQRコードの付いたカードを手渡す
- 帰国の頃を見計らい、評価コメントをメールで依頼
その際に、忘れずに取った写真を添付
もちろん、口コミの内容は、コントロールできません。
しかし、あなたが「この人なら!」と思った方に、口コミの協力をお願いすることはできます。
また、前回でご紹介したように、もしあなたに外国人のお友だちがいれば、その方に協力してもらって、現地の口コミサイトなどに投稿してもらうことも良いでしょう。
こうして、インバウンドを使って課題(1)(2)に対応することで、「リスクを抑えた、手に負える販路開拓」の条件を揃えることができます。
そして、いよいよ第3の課題に取り組むことになります。
第3の課題「現地の流通」を確立する
現在のところ、海外の商流・物流を構築するための最も効果的な方法は、「展示会・商談会」を使うことです。
「すでに展示会や商談会に出展しているよ!」と思われた方も多いと思います。
であれば、課題「(1)基礎知識の教育」や「(2)ブランドの確立」に既に直面されているのではないでしょうか。
一つの解決策として、インバウンド対策の内容や口コミの評価を、海外バイヤーに伝えてあげてはどうでしょうか。
口コミ評価は、市場ニーズのエビデンスの一つになります。
仮に、海外バイヤーが、その口コミを知っていれば、取引成立の確度はさらに上がります。
ファンがファンを呼び、海外バイヤーを惹き寄せる。
そのような好循環をぜひ作り上げてください。
さて、この「展示会・商談会の効果的な活用方法」については、具体的に細かくシリーズ「海外販路開拓マニュアル」で説明しています。
こちらも合わせてご参考ください。
もしご不明な点などございましたら、植草までお気軽にご連絡ください。
ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
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*JBはジャパン・ブランドの略。