前回 「(1) 東京オリンピック、ラグビー・ワールドカップの特需」に引き続き、今回は、 外国人旅行者 について、さらに踏み込んでみたいと思います。
「超円安だからと言って、結局、売れなければ話にならないじゃないか!」
そう思われる方も多いと思います。
でも、考えてみてください。
価格は、安ければ良い、という風潮は、どこか変じゃありませんか?
価格だけで評価できないものの方が多いと思います。
海外では、「良いものは、価格が高くて当たり前」です。
ブランド力が無くても、「良いもの」には価値がある。
この「良いもの」は、私たちが判断するものではなく、最終的に顧客が判断するもの。
顧客である「外国人旅行者」が、遠路はるばる、いったい何を求めて日本にやってきたのか、を考えてみませんか。
外国人旅行者 は、何を求めて日本に来るのか?
この点については、国土交通省の観光庁が、定点観測したデータがとても参考になります。
観光庁 「 訪日外国人 消費動向調査 」
その「2017年 訪日外国人消費動向調査」によれば、
観光目的で来日した外国人が「訪日前に期待していたもの(複数回答)」の上位5位は、
2位 59% ショッピング
3位 51% 自然・景勝地観光
4位 44% 繁華街の街歩き
5位 30% 温泉入浴
これは、「まあ、そんなものだろう」という想定通りの内容。
おもしろいのは、「再び来るなら何したい?(次回したいこと)」の結果です。
2位 45%(13↓)ショッピング
3位 43%( 8↓)自然・景勝地観光
4位 43%(13↑)温泉入浴
5位 32%(12↓)繁華街の街歩き
つまり、温泉入浴以外は、軒並みポイントダウン。
では、逆に伸びているものは、何でしょうか。
6位 30%(18↑)四季の体感(花見・紅葉・雪等)
9位 25%( 8↑)日本の歴史・伝統文化体験
11位 21%( 8↑)日本の日常生活体験
13位 17%(12↑)スキー・スノーボード
14位 15%( 9↑)自然体験ツアー・農漁村体験
16位 12%( 8↑)舞台鑑賞(歌舞伎・演劇・音楽等)
以上に共通しているものは、いったい何でしょうか。
そこに「外国人旅行者のホンネ」が透けて見えませんか?
キーワードは、「体験」だと思います。
しかも、それは「個人的な、特別な体験」。
後ほど詳しく取り上げたいと思いますが、海外の旅行口コミサイトを見てみると、それこそが「旅行テーマ」になっているようです。
実は、これは、私が外国人の友人から聞いた意見とも合っているのです。
「日本人は、たった1週間の休暇でいったい何をするのか」、と尋ねられたことがあります。
私の答は、「リフレッシュ」。
たぶん、私以外でも、そう答える人は多いのではないでしょうか。
すると、
「日本人は、リフレッシュのために休暇を使うのか。まるで電池だね!
ヨーロッパ人のバカンスの目的は、人生を変えるような体験だ。
特別なものなんだ。
今年の僕は、アフリカに野生動物を見に行くんだ。キャラバン!
だから1週間なんて、とてもとても足りない!」(スイス人)
訪日した別の友人からは、
「日本に初めて来たときは、パッケージツアーで一通り観光したよ。
でも次なら【自分ならではの旅行テーマ】を追求するね。」(アメリカ人)
そうなんです。
さきほどの観光庁データでも、個人手配旅行者の比率は、65.5%になっています。(2017年)
わざわざ日本を訪れる外国人、パッケージ・ツアーではなく、個人手配を選択するようになっています。
先ほどのアメリカの友人のように、「初回はパッケージツアー、リピートは個人手配旅行」という外国人旅行者も多いのではないでしょうか。
そして、わざわざ日本を訪れる 外国人旅行者 は、旅慣れています。
なぜなら、日本以外にも、ヨーロッパ、アメリカ、アジア・リゾートなど日本より有名な観光地は、世界に多いのですから。
さて、ここに「インバウンド集客のヒント」がありそうです。
つまり、「自分ならではの、特別な体験」「こだわりの旅行テーマ」こそが、外国人旅行者が求めるものだと思うのです。
彼らをもっと知ることで、 外国人旅行者 を呼び込むことができるのではないでしょうか。
外国人旅行者は、本当のところ、何を求めている?(再考)
ここまで、観光庁データから「外国人旅行者が求めているもの」を考えてみました。
しかし、そのデータを眺めていたら、ふと「何か変だな?」と違和感を覚えました。
それは、「再び来るなら何したい?(次回したいこと)」の内容についてです。
日本食、ショッピング、街歩き。
まあ、その通りかもしれない。当たり前かもしれない。
「でも、そもそも旅慣れた旅行者が、温泉・自然・景勝地巡りで、本当に満足するのだろうか?」
そう思ったのです。
例えば、タイを考えてみましょう。
2016年の人口は日本の約半分ですが、観光客数は日本の1.3倍、観光収入は1.6倍。
日本から比べると、アジアの観光先進国であると言ってもよいかもしれません。
そのタイと日本の、観光コンテンツを比較してみたら、どうだろうか。
たぶん、そこにこの「違和感」の理由が見つかるかもしれない、そう考えました。
タイと日本の観光コンテンツの違いとは?
世界的な観光口コミサイトになっている「トリップアドバイザー」で、確かめてみました。
https://www.tripadvisor.jp/
トリップ・アドバイザーの観光コンテンツの表示ルールは、公開されていません。
そのため、日本とタイでは、条件や結果が異なることも考えられます。
ですから、絶対数の比較は、かなり乱暴な議論であることを、ご留意ください。
日本との単純比較では、上位の観光コンテンツの中身が以下のように違うのです。
- 名所、観光スポット、自然: 日本はタイの2倍
- 屋外アクティビティ、ツアー: 日本はタイの半分以下
いわゆる「 体験型コンテンツ 」(屋外アクティビティ、ツアー、教室、ワークショップなど)の種類も数も、日本よりも圧倒的に多いことがわかります。
この結果の解釈は、いくつもできると思います。
あるホテル・コンシェルジュに、ご意見をおうかがいしたところ、
「海外旅行客は、日本に自然や四季の美しさを求めて来ている。
桜や紅葉は、日本人と同様、観光の定番!」(ホテル・コンシェルジュ)
別の、インバウンドに詳しい方からは、
「日本の観光は、まだ大衆ツアーから抜けきっていないからね。
体験やツアーの開発が遅れている。
タイも自然や名所旧跡は、多いけれど、観光客を楽しませる体験型コンテンツは、日本より充実しているよ。」(専門家)
実際、タイの体験型コンテンツをいくつか見てみると、あることに気付きます。
つまり、旧跡巡り、森林ツアー、マリンスポーツ、サイクリング、キャンピングなど、タイの自然や観光スポットを上手に活用しているのです。
もし仮に、日本がタイの2倍もの自然や観光スポットがあるのなら、体験型コンテンツもタイの2倍あっても良いのではないでしょうか。
さきほどの、私の「違和感」も、ここにありました。
日本は、旅慣れた外国人旅行者を楽しませる「体験アクティビティ」あるいは「体験型コンテンツ」が足りないのではないか、ということです。
次回は、さらに「 訪日外国人の考え方 」に踏み込んでいきたいと思います。
ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
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