2019年、 ラグビー・ワールドカップ が開催されます。
全国で48試合、想定される観客動員数は、実に200万人。
2020年、 東京オリンピック では、ラグビーのなんと5倍、約1000万人。
もちろん、海外からの観客は、この一部でしょう。
スポーツ観戦をきっかけとして、この時期、海外からの旅行者は、急増します。
そして、外国人の訪日 ( インバウンド )の傾向に、さらに拍車を掛けることと思います。
そういえば、「オリンピック特需」という言葉を聞いたことがあると思います。
その意味は、「オリンピックで訪日した外国人旅行者を、商売に活かす」というもの。
では、具体的にどうすれば良いのか?
以下では、インバウンドを商売に活かすための、いくつかの考え方をご紹介いたします。
どうしてインバウンドが海外販売につながるのか?
そもそも、インバウンドが海外の販路開拓にどう役立つのか?と疑問に思われるのではないでしょうか。
これまで、日本の様々なこだわり食品を海外に紹介してきました。
海外バイヤーとやっとのことで商談に及ぶと、
「とても良い商品なんだけどね。
どう使って食べてよいのかが、わからないかもしれない。」
とのこと。
もちろん、差別化のためのストーリーも用意し、価格も納得してもらいました。
それでも、海外バイヤーは二の足を踏みます。
海外の顧客に、これまで見たことの無い商品が受け入れられるまで、時間が掛かります。
海外現地で、顧客に商品を手に取ってもらい、気に入られるまでは、本当に大変。
まず、どの国が良いか、どの顧客層に好まれるか、についての市場調査が必要。
市場が決まったとしても、顧客に使い方が伝わらない。何より価格が高い。
その点、興味を持って来日した外国人にとっては、ハードルは低くなります。
こだわりを持った彼らは、自ら探し出し、やって来ます。しかも現地より安い。
最近では、商品に満足した彼らは、SNSと口コミでその感動を発信します。
そうなんです。
訪日外国人に、私たちの商品やサービスの宣伝マンになってもらうのです。
口コミで評価された商品を、海外バイヤ(小売、卸・商社、代理店など)は求め
ています。
既に顧客が現地にいるので、海外バイヤのリスクは低く、売上を期待できます。
遠回りのように思えますが、実は直接、最終消費者のファンを獲得できる、手段です。
海外市場に浸透するには、現地でさえも時間がかかる。
であれば、足元の国内で、外国人向けに初めの一歩から始めてみませんか。
上手に、リスクを抑えて。
まず、どれだけ外国人の訪日(インバウンド)が過熱しているのか、ざっくりつかんでみましょう。
インバウンドは、どれだけ伸びているのか?
外務省によれば、2017年の訪日外国人客数は、2,869万人(伸び率19%)。
その消費額が、4兆4161億円(伸び率18%)でした。(国土交通省観光庁)
ちなみに、日本経済の伸び率(成長率)は1.5%。
あの、急成長している中国経済ですら、その成長率は6.8%。
この「伸び率18%・19%」とは、まさに驚異的な数字です。
仮に、「この傾向が5年間続けば、2倍になる」という数字です。
そして、2019年のラグビー・ワールドカップ、2020年の東京オリンピックが控えています。
この前後は、都市部だけでなく、地方にも外国人旅行者の姿が、頻繁に見られるようになるでしょう。
でも、なぜ今、インバウンドを商売に活かすのか?
以前、海外の食品展示会で、出展者の方と立ち話していたときです。
ふと「海外進出の目的」を尋ねたところ、
(国内では)新しい顧客が増えていない。人口が減ってる?
とのことでした。
少し気になって、別の方にご意見を聞くと、
海外からの旅行者が2000万人を超えたってね。ウチの商品も喜んでもらえた。結構、イケるかもしれない。
人口減少と外国人への販売、どう結びつく?
確かに、日本の人口は、減少傾向にあります。
調べてみると、なんと毎年約40万人ずつ減少している、とのこと。
2018年2月27日 日経新聞 ニッセイ基礎研究所主任研究員 土堤内昭雄 氏の記事より
「17年出生数から死亡数を差し引いた人口の自然減は40万人突破」
出典: 厚生労働省「人口動態統計の年間推計」
人口減少は、全国で薄まっているため、なかなか実感がありません。
しかし、毎年、40万都市が一つ、まるごと消滅していることになります。
- 豊田市(愛知県) 42万人
- 長崎市(長崎県) 42万人
- 柏市 (千葉県) 42万人
- 高松市(香川県) 42万人
- 富山市(富山県) 41万人
- 岐阜市(岐阜県) 40万人
- 枚方市(大阪府) 40万人
- 横須賀市(神奈川県) 40万人
- 宮崎市(宮崎県) 40万人
- 豊中市(大阪府) 40万人
10年で、10都市400万人。
少子高齢化と人口減少による、消費は、じり貧に陥る可能性があります。
「その分、外国人労働者も増えているぞ」と、思われている方もいることでしょう。
そうなんです。
実際、同じ2017年1年間で、外国人労働者は、約19万人も増えました。
そして、特に東南アジアからの労働者の方々は、日本に家族を招いたり、おみやげを買って送ったりしています。
この差分である
を、どう補ったら良いでしょうか。
国内消費だけでは、この減少分をカバーできないかもしれない。
やはり、「外国人旅行者の消費」と、それによる「輸出額の伸び」に期待したいところです。
でも、どうして外国人旅行者が増えているのか?
「どの国の旅行者が増えているのか」を、調べるのは簡単です。
様々な統計があります。
でも、ちょっと待ってください。
たぶん、私たちが、本当に知りたいことは、「どんな旅行者が増えているのか」ではないでしょうか。
顧客のことをもっと知ることで、「何を求めて、日本を訪れているのか」が、わかってきます。
そして、そこに商売の気付きやきっかけが、あるような気がします。
振り返ってみると、2010年以降に外国人旅行者が増えてきたように思えます。
かんたんに、その理由を整理してみると、
(1) 日本に近い、アジアの国々が豊かになってきたこと
特に、東南アジアの都市部では、富裕層、そして上位中間所得層が増えてきています。
(2) 訪日ビザ発行の条件が大幅に緩和されたこと
- 2013年 タイ、マレーシア
- 2014年 中国
- 2017年 ロシア
- 2018年 インド
専門家によれば、この「ビザ発行条件の緩和」が大きなきっかけ、とのこと。
(3) 円安傾向が続いたこと
国内にいると、この「円安傾向」には、あまり気付きません。
でも、海外へ旅行や出張に行かれた方は、心当たりがあると思います。
- 物の値段が安かったはずのアジアで、値段が上がったように感じる
- アメリカやヨーロッパに行くと、いつの間にか「日本の方が安くて美味い!」が口癖に
- 上海や香港など都市部では、物価は日本より高い
「 超円安 」?
実は、今の日本は、「超円安」なんです。
詳しくは、以下をご参考ください。
私たちは、デフレに慣れてしまっています。
たぶん、私たちの考えにしみ込んでしまっています。
つまり、「こんな高いものを外国人も買わないだろう」と、つい考えてしまいます。
しかし、外国人の本音は、かなり違うようなのです。
日本に訪れている外国人は、「超円安」の恩恵?を少なからず受けているからです。
もしかすると、私たちが「高い」と思っている物やサービスでも、彼らにとっては「以前より、かなり安い」と感じているかもしれません。
販売価格を考える際に、この点をご留意ください。
外国で買う日本商品に、この「超円安」は、当てはまりません。
現地小売価格は、輸送料・関税などが加わって、日本の価格の2~3倍以上。
つまり、「超円安」の恩恵を受けるのは、訪日した外国人のみ、ということになります。
円高になれば、その分だけ、販売価格が値上げされることになるでしょう。
つまり、訪日外国人だけが、この為替のマジックの恩恵を受けるのです。
次回は、「(2) 外国人旅行者が求めるものとは?」について。
ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
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