日本食品の輸出額 は、どこまで伸びる?

日本食品の輸出額

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日本食品の輸出額 目標は1兆円(2019年)です。
それが果たして高すぎる目標なのか。
その根拠になっている「日本食ブーム」でどこまで伸びるのか。
いったん時間軸を外して、どのくらいのポテンシャルがあるのか、を考えてみました。


日本食品の輸出額 目標1兆円!

2016年、日本の食品輸出1兆円の目標が、2020年から2019年に前倒しされました。

その根拠は以下のようなものでしょう。

  • 生活習慣病や健康への関心の高まり
  • 健康維持に効果的な日本食品のニーズ拡大
  • 各国主要都市での日本食レストランの増加(急増)
  • 2013年「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録
  • 訪日外国人旅行者(インバウンド)が増加(急増)し、口コミで情報拡散

一方で大手企業はともかく、中小企業で食品輸出に成功した事例が身近にないため、「本当にできるのか?」という意見もよく聞きます。

以前、「訪日外国人旅行者が増えて、どれだけ食品輸出は伸びるのか?」では、それぞれの国毎に伸びしろを考えてみました。
「輸出先としてどの国を狙うべきか?」という点で、参考にしていただければ、と思います。

訪日外国人


「日本人は食品輸出にチャレンジしない」!?

先日、バンコクで海外バイヤーの友人と食事をしながら話していると、

「日本の工業製品は大量に輸出されているのに、食品輸出は少ない」
「日本語の名前を付けた海外産食品が多くなっている」
「日本ブランドをアジア人が利用している」
「良い商品はまだ売れるのに」

などと言われました。
そして、最後に「日本人は輸出にチャレンジしないからね」とも。
もちろん、切り返しましたとも。
今に見ていろ、輸出はどんどん伸びるからね、と。

その時に私が話した根拠とは、

「同じ先進国であるフランスやイタリアでは、工業製品だけでなく、フレンチ食品やイタリアン食品を大量に輸出している」

「海外での日本食ブームは、ご存知の通り。外食ランキングでもフレンチ、イタリアンと同じかそれ以上になってきている」

「国内総生産に占める食品輸出では、数倍の伸びしろ」

というもの。
実は、その時、最後の「伸びしろ」は、記憶が曖昧だったため、具体的な数字を挙げることができませんでした。

帰国してから、そのことを思い出し、自分なりに整理してみたのです。


日本食品の輸出額 は、将来的にどこまで伸びる?


(出典)IMF「国内総生産」2015、knoema「農産物輸出額」2015

実は、先進国の中でも、日本の食品輸出額は、非常に小さいです。
2015年実績では、

  • フランス 1.87%
  • イタリア 1.56%
  • イギリス 0.63%
  • アメリカ 0.46%
  • 日本   0.14%

1%未満の議論では誤差が大きすぎると思うかもしれません。
しかし、たった0.14%でも、その規模は、7,451億円です。
まして、他国との比較では明らかに見劣りします。

アメリカは、実は農業が強いのであまり比較にはならないかもしれません。
現状に近いのは、イギリスでしょう。
それでも3倍近い差があります。


和食は、どこまで受け入れられるのか?

そう、問題は、「一体、和食は、どこまで受け入れられるのか?」ということ。
あくまでも個人的な意見ですが、将来的に和食は、フランス料理・イタリア料理と同程度に浸透するのではないでしょうか。
この10年間で、和食と和食風レストランの普及は、すさまじいものがあります。
先進国の主要都市を中心として、和食と和食風レストランを頻繁に見かけるようになっています。


フランス料理、イタリア料理と比較すると

日本と同じように、「食」にこだわりを持ち、工業先進国である、フランス、イタリアと比較してみましょう。
各国で、フランス料理・イタリア料理は、普通に受け入れられています。
もちろん、現地人経営のフランス料理店やイタリア料理店も数知れずあります。
食材も現地生産。(パスタ、オリーブやマッシュルームなど)
ワインも現地生産。(アメリカ、チリ、オーストラリア、そして日本などで)
それでも、フランス、イタリアから世界への食品輸出額は、巨額です。
その規模は、なんと日本の10倍以上。

ということは、将来、「和食」がフランス料理・イタリア料理と同じくらい、海外に浸透したら、今の10倍以上のポテンシャルがある、ということです。

仮に、国内総生産(GDP)が現在と同じで、食品輸出がフランス・イタリアと同等の規模になったとすると、現在の約12倍、約9兆円になります。

もちろん、時間もマーケティング宣伝の労力も根気も想像以上に必要でしょう。
フランス、イタリアは、官民それぞれ、輸出促進のために相当な努力をしてきました。
各国への長い移民の歴史もあります。

しかし、いま各国主要都市で繰り広げられている「和食ブーム」を利用しない手はありません。
インバウンドが増えて、その口コミが各地へ拡散・還元されて、さらにニーズは高まります。
その果実は、そのポテンシャルにいち早く気付いた人に与えられます。

食品輸出は難しい。難しいからこそ、その果実もやりがいもある。
それを、過去のフランス人、イタリア人は、地道に愚直にやってきた。
だったら、私たち日本人にも、できないはずないですよね。

ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
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