今回は食品輸出の話です。
日本では、食品にアレルギー原因物質(アレルゲン)が含まれている場合、食品への表示が義務付けられています。
海外で食品を販売してもらう場合には、その国で義務付けられている アレルギー表示 をしなければなりません。
日本と海外でのアレルゲン表示品目の違いや、対応方法についてご説明します。
日本のアレルギー表示、振り返り
まず、日本のアレルギー表示について、かんたんに振り返ってみたいと思います。
ご存知のように、アレルギーを引き起こす「特定原材料等」として指定されているのは、
表示 | カテゴリ | 対象品目 |
---|---|---|
表示義務あり | 特定原材料 7品目 | 卵、乳、小麦、落花生、えび、かに、そば |
義務なし(表示を推奨) | 特定原材料に準ずるもの20品目 | 牛肉、豚肉、鶏肉、ゼラチン、大豆、やまいも、ごま、まつたけ、りんご、もも、オレンジ、バナナ、キウイフルーツ、くるみ、カシューナッツ、さば、さけ、いくら、いか、あわび |
となっています。
その表示の仕方は、原材料名への記載です。
- 個別に表示する場合:
例)小麦粉、糖類、卵、ショートニング(大豆油を含む)、酸化防止剤(V.C) - 一括して表示する場合:
例)小麦粉、糖類、卵、ショートニング、酸化防止剤(V.C)、(現在料の一部に大豆を含む)
に分けられています。
「含まれているかもしれない」といった、可能性表示は認められていません。
では、海外での場合は、どうなるでしょうか?
アメリカでの アレルギー表示 の規制
アメリカは、世界の中でも、食品アレルゲン表示に最も厳しい国かもしれません。
スーパーの店頭でも、アレルゲンフリー食品が分かりやすくまとめられていたり、「アレルゲンフリー食品専門店」などもあります。
日本の特定原材料7品目に対して、アメリカでは「主要食品アレルゲン」として8種類を定めていて、日本では表示義務のない「魚類、大豆、ナッツ類」が新たに加わっています。
日本の「エビ、カニ」は、アメリカでは「甲殻類」としてまとめられていて、ロブスターなども対象になっています。
しかも、アレルゲン表示では、甲殻類だけでは不十分で、エビ、カニ、ロブスターなどの「種」を明記しなければなりません。
魚類も、タラ、マグロ、サケなどの「種」を、同様にナッツ類も、アーモンド、栗、銀杏、クルミ、などの「種類」を明記しなければなりません。
ちなみに、貝類(牡蠣、ホタテ、ムール貝など)は、アレルゲンではありません。
JETROが定期的に翻訳している「米国食品表示ガイド」(米国FDA、食品医薬品局)をご参考ください。
問題は、このようなアレルゲンが含まれている食品を輸出する場合、どのように表示すべきか、です。
日本だけを想定していると思わぬところで、問題になります。
とは言え、各国のアレルギー表示の規制を把握するのは、かなりの手間。
輸出対応食品のアレルギー表示をどうすれば良いのか?
海外輸出のステップに応じて、アレルギー表示を見極めればよいと思います。
かんたんに整理してみると、2つのケースが考えられます。
- 展示会などで不特定の海外バイヤーに渡す「商品仕様書」
- 輸出先が決まって、商品に添付する「商品ラベル」
「(1)商品仕様書」には、主要国で表示義務のあるアレルゲンを記載すればよいと思います。
輸入経験のある海外バイヤーは、自国のアレルゲン規制を把握しています。
そのため、主要国の表示義務のあるアレルゲンを「最大公約数」的に表示しておきます。
表示の仕方は、「アレルギー表示 Allergen Infomation」として、まとめて記載しておきます。
原材料名に含めても良いですが、わかりやすく別項目として整理しておきましょう。
日本 (参考) | 日本を除く主要国 (表示義務のある国名) |
---|---|
卵 | 卵(主要国) |
乳 | 乳(主要国) |
小麦 | 小麦、ライ麦、大麦、スペルト麦、及びその雑種 (EU、カナダ、豪・NJ) |
落花生 | 落花生(主要国) |
そば | そば(韓国) |
えび、かに | 甲殻類(主要国) |
魚類(主要国) | |
大豆(主要国) | |
豚肉(韓国) | |
貝類(カナダ) | |
軟体動物(イカ、タコ、アワビ類、イガイ・イシガイ類)(EU) | |
トマト(韓国)、セロリ(EU) | |
ナッツ類(EU、米国、カナダ、豪・NJ、韓国) | |
ごま(EU、カナダ、豪・NJ) | |
マスタード(EU、カナダ) | |
もも(韓国) | |
蜂花粉、プロポリス、ローヤルゼリー(豪・NJ) | |
10㎎/Kg以上の亜硫酸塩 (EU、カナダ、豪・NJ、韓国) |
この表の「亜硫酸塩」とは、ご存知の方も多いとおもいますが、ワインなどの酸化防止剤、ドライフルーツなどの漂白剤に使われていることがあります。
以上は、消費者庁「アレルギー物質を含む加工食品の表示ハンドブック」(2014年3月)の「諸外国でのアレルギー表示対象品目(2013年)」を参考にしました。
さて。
具体的に、輸出先が決まったといたしましょう。
大抵の場合は、現地の輸入商社や輸入卸などが介在すると思います。
その際は、彼らに「(2)規制に対応した商品ラベル」を作ってもらえばよいのです。
あるいは、叩き台を提示して、修正してもらうのです。
アレルゲン交差汚染にご注意!
さきほど、アメリカの場合は、食品アレルゲン表示が厳しい、とお話ししました。
アメリカへの食品輸出の場合、食品登録が義務付けられており、生産場所や流通倉庫などの現地査察が行われることがあります。
いわゆる「FDA査察」です。
特に注意していただきたいのは、加工工場で複数のアレルゲンを取り扱っている場合です。
以下のような点が、現場査察にて確認と指摘を受けることがあるそうです。
- 食品製造のライン変更や段取替えの場合、アレルゲン残留を防ぐための清掃をきちんとやられているか
- 作業員が複数の製造ラインに従事する場合に、作業衣にアレルゲン付着することを想定して、着替えなどの対応をしているか
- 以上が規定として明文化され、作業員の教育がなされているか
ご参考まで。
海外への食品輸出の中でも、特にアメリカ輸出については、慎重に対応する必要があると思います。
ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
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