「海外バイヤーから 商品輸出 して欲しいと頼まれて、困っている」という相談を持ち掛けられることが増えてきました。
はじめての 食品輸出 。
でも、このようなケースは、とても有り難いことだと思います。
本当に、恵まれています。
多くの生産者が「商品を輸出したいがどうやって?」と悩んでいるのですから。
だからこそ、このような引き合いは大切にしたいところでしょう。
こだわりの逸品だからこそ、品質も価格も高い。
輸出すれば、輸送料・関税で、現地での販売価格はさらに高まる。
それでも、海外バイヤーは「これは現地で売れる!」と考えます。
しかし一方で「どこまで売れるかわからない」とも思っています。
それでも、このチャンスを見逃すわけにもいかず、まず声を掛けてきます。
輸出の経験が無いのに、海外バイヤーから価格を求められた!
2018年Foodexの際に、このような幸運な生産者から相談を持ち掛けられました。
おうかがいすると、生産者の方には、これまで食品輸出の経験がありません。
しかも、この海外バイヤーも、初めて日本食品を取扱うようです。
海外バイヤーは、日本に輸出を代行してくれる契約商社も持っていません。
私にとっても、土地勘のない、まったく初めての国でした。
そのため、すぐに紹介できるような懇意の商社がいません。
そうなると、ゼロベースで食品輸出を組み立てていくしかありません。
覚悟を決めました。
ゼロベースでの 食品輸出 をどう組み立てる?
取引価格が決まらなければ、取扱量も決まりません。
当初から大量に取引できないから、小ロット取引から始めることになります。
しかも、貿易の様々な手続きは、生産者にとってはハードルが高すぎる。
ということは、
- 小ロットでも対応可能
- 輸出入業務の一切を引き受けてくれる
- しかも国内取引
という条件を受け入れていただける商社を探さねばなりません。
いわゆる、「間接輸出」です。
海外バイヤーは、どれだけ待ってくれるのか?
このような場合、まずどうすべきでしょうか?
ご存知の方なら「すぐにお礼メールを出して時間を作る」と思うのでは。
そうなんです。
価格を出せないからと、何のお知らせもせず、海外バイヤーを1ヶ月以上も放っておけば、まず間違いなく商機を失うと思います。
とりあえず、引合いを受けた翌週、すぐに、
- 興味を持っていただいてありがとう(サンキューメール)
- 初めての輸出なので、輸出入業者選定に2週間欲しい
と連絡してもらいました。
この2週間という期間も、実は、ぎりぎりの設定になります。
バイヤーは、現地に戻れば、調達会議で新商品の取引可否を議論するでしょう。
求めるCIF価格もFOB価格もわからなければ、輸出入業者もこれから選定する。
通常なら、現地への受渡しまでの商流・物流を決めるだけでも最低でも1ヶ月。
バイヤーからのお断りを覚悟した上で、「業者選定2週間」を設定しました。
- CIF価格は、輸出者が相手国の港で荷揚するまでの費用を含む。
国内卸価格に、国内輸送・梱包・通関・海上輸送・保険料等の費用を加えて算出します。- FOB価格は、輸出者が国内の港で本船に荷積みするまでの費用を含む。
国内卸価格に、国内輸送・梱包・通関などの費用を加えて算出します。(Wikipediaより。内容編集済み)
時間との勝負
すぐに、商品情報シート(英文)と問合せ用の商社リストを作成しました。
食品添加物や現地の規制もできるだけ調べておきます。
相手の海外バイヤーについても、国際情報データベースやネットで情報収集。
そして進め方を生産者にご了解いただき、候補の商社に相談を持ち掛けました。
やはり、大手や中堅の商社は、小ロット取引に二の足を踏みます。
しかも、現地の輸入卸に確認を取るのに何日もかかります。
2週間後の期限が、どんどん迫ってきます。
その間の様々なドラマについては、本論とは筋が違うので詳しく触れません。
想定以上に大変だった、とだけ申し上げておきます。
意中の国内商社にめぐり合う
そして、最後になって、素晴らしい国内商社にめぐり合うことができました。
- 現地に輸入卸を持っていて、卸との関係を大切に維持している
- 日本食品の取扱い実績も多い
- 国内商社との国内取引なので、もちろん円決済
- 何よりありがたいことに、中小食品メーカーの気持ちを汲んでいただける
その商社の方からは、「海外バイヤーの手元に船便で届いても『こんな味じゃなかった』と、後々問題にならぬよう、すぐにサンプルを送ろう」とご提案頂きました。
早速、サンプルを商社に送っていただくよう生産者に依頼しました。
そして、すぐに海外バイヤーへ連絡。
- 日本側の輸出商社が見つかり、現地の輸入卸経由で商品を渡すことができる
- 船便で品質が劣化しないか、サンプルを送る
- サンプルと共に、現地輸入卸から見積りを提示する
すると、海外バイヤーからは、すぐに反応がありました。
「商流について了解」
「サンプルと見積を待ち、判断する」
これで、ほっと一安心。
バイヤーが待ってくれる、という意向を確認できたのです。
しばらくして、ようやく船便が現地到着。
さらにバイヤーと何度かやり取りし、ようやく取引にこぎつけることできました。
振り返ってみると
インバウンドが一般的になり、外国人旅行者も18%の高成長率で増えています。
海外の富裕層は、より本物志向になってきています。
価格競争に負けない、こだわりの日本商品に対するニーズも増えていくことでしょう。
- 今まで日本食品を取扱ったことのないバイヤー
- 今まで海外輸出を経験したことのない生産者
の引合いや取引は、それほど珍しいことではなくなるでしょう。
やって見れば、海外への食品輸出は、それほど難しくありません。
商機を活かすポイントは、縁とスピードだと思います。
海外への志を持たれている方に、ご参考になれば、幸いです。
ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
優れた日本の商材を国内、海外へ。
https://jbmarket.jp