はじめての海外商標登録 (2) マドプロ 出願を活用

マドプロ を上手に活用

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前回では、「(1) 冒認商標」について、簡単に触れました。
今回は、外国での商標登録における勘どころをご説明しましょう。
マドプロ 」「 マドプロ最適化 」とか聞きなれない言葉については、なるべく簡単に説明します。


外国での商標はどうしたら取れる?

さて、外国で商標権を取得するためには、基本的に各国で手続きする必要があります。

  1. 各国に直接出願する方法
  2. 国際登録出願(マドリッド・プロトコル。通称「マドプロ」)を利用して出願する方法
  3. 欧州連合でEU知的財産庁への出願でEU加盟国すべてに出願する方法

マドプロとは、個別の国にそれぞれ商標を直接出願する手間を省くため、加盟国に共通し一括登録出願することができる制度(マドリッド・プロトコル)の略称です。
日本も2000年に加盟しています。
もちろん、マドプロ加盟国であっても、直接出願することも可能です。

一般的に3か国以上であれば、直接出願するよりも、マドプロを使って出願する方が、費用が安くなります。
しかし、香港・台湾などマドプロに加盟していない国に対しては、(1)直接出願しか方法がありません。(2017年現在)
2017年にはタイがマドプロに加盟するなど、加盟国が増えています。

仮に、複数の国を対象として商標出願するケースを考えてみましょう。
例えば、日本からの食品輸出上位5か国(UN統計2015年)であれば、以下になります。

  1. 香港
  2. アメリカ
  3. 台湾
  4. 中国
  5. 韓国

このうち、実はマドプロ加盟国は、アメリカ・中国・韓国の3か国です。
香港・台湾は、マドプロ非加盟のため、直接出願するしかありません。


マドプロ 出願の条件

マドプロでは、国内商標の出願あるいは登録内容を「基礎」(この基礎が後で問題になります)にして、日本の特許庁へ出願し、マドプロ加盟国であれば、自由に指定して出願できます。
その後の追加出願も可能。
(あくまで出願まで。登録と審査の手続きは、国毎に異なります。)


(重要)「国内商標があれば、外国での登録は簡単だろう」は間違いだった!?

実は、私も勘違いしていました。
国内の商標を取った後で、マドプロを使えば良い、と思っていたら、国内の商標登録内容(いわゆる「指定商品・指定役務」というやつです)がマドプロ用に最適化されていませんでした。
このマドプロの場合、加盟国共通であるために、この「指定商品・指定役務」は、国内登録とは似て非なるものになります。

ここで先ほどの「国内登録内容がマドプロの基礎」という条件にひっかかるわけです。
そのまま、出願してもマドプロ最適化されていないため、基礎出願が拒絶査定される可能性があります。
私の場合は、いちいち国内商標の登録内容を修正するよりも、いったん取り下げて新規出願する方が費用・時間的にも有効、ということで、泣く泣く既存登録取下・新規出願せざるをえませんでした。
つまり、先行して自力で国内登録した努力と費用と時間が「高い授業料」となってしまいました。。。

正解は「国内商標の出願時点から マドプロ出願 を想定して準備しておくこと」だったのです。


気になる費用は?

国によって翻訳や代理人手数料が異なりますが、当社の場合は、1商標2区分で以下の費用がかかりました。

  • 個別出願:約20万円/国
  • マドプロ出願:共通(約20万円)プラス 約10万円/国

これにそれぞれの国での登録料が別途かかります。(数万円程度)
また、各国審査の結果、拒絶通報が発せられる場合、中間対応の費用が掛かることもあります。(数万~20万円程度、内容に応じて。)
ざっくりですが、国毎に約20~30万円程度かかる、と想定しておく必要があります。
(もちろん、弁理士事務所やサービス内容によって金額は変わりますので、ご注意ください。)


補助金を活用する!

例えば5か国に出願するとなると、出願だけでも80万円以上もかかる計算になります。
私たち中小企業にとっては、かなりの出費です。

ところで、そのような中小企業の海外進出・輸出の促進のために、各都道府県やJETROで商標登録の補助金制度が用意されています。
補助金の上限もありますが、約1/3~1/2の補助を受けられるのは、とても心強い。
もちろん、当社もしっかり利用させていただきました。


弁理士の条件

さて、依頼すべき弁理士の要件は、以下のようになります。
(あくまで私見です。ご参考程度に。)

  1. 各国代理人(弁理士)との人的ネットワーク
  2. 外国商標の出願・登録・中間対応の実績
  3. 各国での商標トラブル対応の経験
  4. 補助金申請対応の実績
  5. TV&電話会議(facebook、LINE、Skypeなど)で気軽に相談

この中で、特に重要なのは「(3)トラブル対応」です。
商標登録は、ブランド防衛のための予防手段ですが、国によっては予防にすらなりません。
ブランドが強くなればなるほど、トラブルはつきものだと覚悟しておいた方が良いですね。

当社のケース

当社の場合は、弁理士の松本龍太郎先生をご紹介してもらい、スムーズに出願し、補助金の申請も無事に済ませることができました。
松本先生は、特に各国での特殊事情などに詳しく、フットワークも軽く、さまざまな相談に乗っていただきました。ありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。

松本特許商標事務所
http://mrpat.jp/index.html


補助金申請対応とは

補助金申請対応とは、申請そのものを代行することではありません。
助成金申請に対応した、国内あるいは現地代理人の見積・報告書などを作成していただける、ということです。



ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
優れた日本の商材を国内、海外へ。
https://jbmarket.jp

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