展示会に出展された方にとってはご存知のことだと思いますが、商談後のアフターフォローはとても重要です。
まず、展示会が終わってすぐにサンキューメールをお送りする。
海外バイヤとの商談では、国内商社経由で価格を提示します。
場合によって、国内商社と海外バイヤの双方へサンプルをお渡しします。
取引確度を高めるためには、 商談アフターフォロー を一気呵成に行っていきます。
商談プロセスはまだ終わっていない
本当のクロージングは展示会の後のアフターフォローと言っても良いかもしれません。
商品を買い付けに来た海外バイヤも、商談相手の熱意と根気を確認したいと思っているでしょう。
つまり、展示会・商談会での「対面でのお見合い」とは異なり、実際の実務としての取引では、互いの真摯な対応が求められるのです。
ですから、アフターフォローは速やかに、かつ組織的・計画的に行動します。
私が考えるアフターフォローとは、次の三段構えになります。
- サンキューメール
- 価格表を国内商社へ提示
- サンプルの手配
この三段構えを、順次手掛けていくことで、海外バイヤに直接的・間接的に、そして継続してアプローチしていきます。
国内商社と一緒になって、海外バイヤへ働きかける、ということです。
それが、海外バイヤにとっても、安心材料になるでしょう。
以下、一つずつ、説明していきましょう。
商談アフターフォロー (1)サンキューメール
海外バイヤへ「商談の御礼」を、速やかにかつ簡潔にお伝えします。
担当の国内商社が決まっているなら、その商社に商品見積書をすぐにお送りする旨を伝えます。
その際に、重要なのは、商談の最後に撮った記念写真を添付すること。
この一枚に、海外バイヤと私たちの笑顔、背景の商品パネル、そして商談の参加者の想いなどがぎゅっと詰まっていて、一目見れば、商談内容を思い出すことができると思います。
考えてみてください。
ただでさえ記憶しにくい外国人の表情と名前は、いつの間にかごっちゃになりがちです。
それは、海外バイヤも同じこと。
海外バイヤも、3日間で10件以上の商談を繰り返しているはず。
帰国してからメモや記憶を辿っても、肝心の相手の表情・熱意や重要な「信頼度」を思い出すのは、そう簡単ではないでしょう。
つまり、商談最後に記念写真を撮っておいたのは、実はアフターフォローのためだったのです。
フェイスブックなどに掲載するためではありません。
海外バイヤも心得ていて、「だったら私のスマホでも撮ってください」と気付いて動かれる方もいます。
(2) 国内商社へ価格表を提示
サンキューメールをお送りしたら、今度は国内商社へ連絡します。
国内商社へ提示する資料を確認するためです。
場合によって、国内商社に口座を開く必要があるかもしれません。
初めから、取引口座情報の提示、取引基本契約の締結、などを求められるケースもあります。
また、商品仕様書はもちろんですが、さらに取得認証のコピー、原産地証明書などの追加資料を求められることがあります。
仮に、原産地証明書、放射性物質検査証明書、残留農薬検査証明書、成分分析表などが追加的に求められれば、その分のコストと時間がかかります。
その国で求められるラベルを作成・添付する必要もあるかもしれません。
その分をどこまで卸価格に含めるべきか。
そこは、長期的な商売を考慮した、経営判断が必要とされます。
そして、価格表についてです。
国内取引とは言え、海外輸出です。
最低発注数量(最低〇箱など)、そして発注単位(〇箱単位など)を考慮した卸価格をまず考慮します。
また、一般的に、国内商社の持っている倉庫までの送料を含めた、卸価格にします。
そのため、倉庫の住所を確認し、そこまでの送料を把握しておく必要があります。
場合によって、梱包資材や搬送業者の指定を受けることもあります。
価格表はPDF化して、メールでお送りし、国内商社が原本を欲しいと依頼されれば、郵送します。
そして、国内商社から海外バイヤへ、価格表が提示されたら、その結果を国内商社に確認します。
(3) 国内商社へサンプルを手配
国内商社と確認すべきことは、価格に考慮すべきポイントだけではありません。
サンプルの必要性についても確認します。
サンプルをお送りする目的は、いくつかあります。
- 品質変化のテスト目的
- 営業目的(取引先等への配布、ニーズ確認)
- 営業目的(国内商社による)
商品の保管温度が常温の場合、ドライコンテナ(常温)で輸送します。
リーファコンテナ(冷蔵・冷凍)よりも安価なドライコンテナ(常温)で海上輸送する場合、60度を超える気温や湿度の変化にさらされることもあります。
特に、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、中東への輸送の場合、その期間が1ヵ月に及ぶことも。
海外バイヤによっては、海上輸送の品質変化、つまり劣化にこだわります。
そのため、試しにサンプルを海上輸送することで、品質変化をチェックするのです。
海外バイヤが輸入商や卸の場合、懇意にしている取引先である小売店やレストラン・ホテルなどにサンプルを試用してもらい、市場ニーズを確認することもあります。
その場合は、小容量で数を求められることがあります。
サンプルは、海外バイヤだけでなく、国内商社が必要とする場合もあります。
国内商社は、私たちが商談を行った海外バイヤだけでなく、他国の海外バイヤをも担当しています。
国内商社の担当者が、懇意にしている海外バイヤへ紹介していただければ、販路拡大につながります。
同じ商社ですから、既に提示している書類だけで十分、ということも。
この場合は、通常容量で1・2個をお渡しするだけで良いでしょう。
さて、サンプルをお渡しする場合、肝心のコストはどうしますか?
大量のサンプルをお渡ししても、ニーズが見込めないから、取引に至らない、というケースもあります。
将来の心理的な擦れ違いを避けるのであれば、有償でサンプルを提供することも可能でしょう。
もし、海外バイヤや国内商社に嫌がられたら、「初回正式出荷の際に値引き」を提案すれば良いでしょう。
いずれにしろ、サンプル提供コストについても、ある意味、経営判断が必要になります。
アフターフォローでのご注意
注意していただきたいのは、複数の商談と商品採用を並行して進めている海外バイヤへ、あれこれと連絡をしないことです。
サンキューメールまではOK。
その後は、国内商社に交通整理してもらいましょう。
海外バイヤも国内商社に整理してもらった商品・会社情報や価格表を見ながら、最終的な取引判断をします。
今回の展示会では、10/12に会期が終わったので、
- 翌週:サンキューメールの送付
- 10月末まで:サンプル手配
を作業目標として、出展社皆さんにご案内しました。
私の方では、各社商品をクロスセルしていただくために、展示会終了後に、あらためてPDFカタログを海外バイヤと商社の方々にお送りしました。
以上、「日本食品輸出EXPO」の攻略法について、ご案内いたしました。
<後記>
ありがたいことに、サンプル出荷だけでなく、海外バイヤから初発注を受けて出荷しました、というご連絡を相次いで頂戴しました。
通常、食品輸出を志して取引開始までに3~5年かかる、と言われているだけに、短期間で輸出実績に到達したのは「ありがたい」としか言いようがありません。
そのうちの2社については、これを機会として積極策に転じて、海外視察と海外フェアの企画に着手しました。
私もお手伝いすることになりました。
海外での販路開拓は、難しくはありません。
日本食品の輸出機会は、想像以上に多いのです。
きっかけさえつかめば、後は進め方の問題だと思います。
2019年度についても、これから共同出展を検討していく予定です。
ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
優れた日本の商材を国内、海外へ。
https://jbmarket.jp