米国カリフォルニア州への食品輸出は、 BPA(ビスフェノールA)にご注意!

BPA Free green

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2018年8月30日、カリフォルニア州法で、有害物質に関する表示ルールが厳しくなります。
特に一般的な包材原料として使われている BPA (ビスフェノールA)に関して、ルールに即した表示が必要になりました。
これを怠ると訴訟に巻き込まれる可能性がある、と言われています。
日本の食品は、生産者が知らないうちに、米国へ輸出される、ということがないとは言い切れません。
今回は、そのリスクと対処についてご案内します。


そもそも、BPA(ビスフェノールA)とは何だ?



BPAをご存知でしょうか。

聞きなれない言葉だと思います。

植草
いきなり余談で恐縮ですが、私もEUへの飲料輸出でひっかかった、苦い体験があります。

海外バイヤーから「素晴らしい商品だ!念のため、BPAが使われていないか、確認してほしい」という一言から、一気にBPA問題に巻き込まれました。

生産者に確認しても「BPAって何?」、
包材メーカーを突き止めても「調べてみるから」と言われて2カ月。
結局、「BPAが含まれているらしい」と判明し、
包材変更を検討してもらったのですが「充填ラインを変えなければ対応できない」と断念。
海外バイヤーには、3か月以上かかって、「だめでした。。。」と報告しましたが、時すでに遅し。
商機を逸してしまいました。

EU輸出を期待されていた、生産者、そして海外バイヤーにもご面倒をお掛けする結果となってしまいました。。。
その時の生産者の方には、とても申し訳なく思います。すみませんでした。

EUへの食品輸出で「BPA対応はとても重要」とされているのに、日本国内では、関係者以外ではあまり知られていません。
事の重大さが伝わっていないので、EU輸出の際に、各自が同じようにBPA問題に直面し、試行錯誤を繰り返してしまう、ということが実態なのではないでしょうか。
もし、あなたが、食品輸出を考えられているのであれば、いつかはBPA問題に直面することになるでしょう。
だったら、早いうちから対処を考えておいた方が良いのでは?

さて、このBPA、ビスフェノールA。
女性ホルモンのエストロゲンに似た、環境ホルモンのひとつと言わています。
女性の不妊症、乳幼児の脳の発達障害などとの関連が疑われています。
ネットでもさまざま指摘がありますが、それはこの説明の目的とはちょっと異なります。
詳しく知りたい方は、ネットで検索してみてください。

話を元に戻しましょう。
この BPA、困ったことにポリカーボネートやエポキシ樹脂など、実にさまざまなプラスチックに使われています
また、缶のコーティング材にも使われていることがあります。
製品の包材から、原材料のコンテナ、コップ、調理器具、さらには生産ラインの副資材まで。
カリフォルニア州で指摘事例を見ると、レシートなどの感熱紙、そしてサングラスまで。
率直に申し上げて、きりがありません。

しかし、まずは製品と直接触れてしまう「包材」に焦点を当ててみます。

BPAが使用されている包材の種類(一部)
  • ポリカーボネートやエポキシ樹脂などの材料を使った包材
  • 缶詰の内部コーティング材
  • ガラス瓶への蓋(王冠)の裏側の緩衝材
  • 発泡性飲料の王冠
  • ジャムなど大口径のガラス容器の王冠


レトルト・パウチなどの包材でもBPAが使われているケースが少なくありません。
徐々にBPA不使用(「BPAフリー」と言われます)も増えています。
包材カタログにも「BPAフリー」という文字を目にされたことがあるかもしれません。

問題は、飲料に使われる、プラスチックキャップや金属キャップです。
BPAフリーのペットボトルは多いのですが、ガラス瓶の王冠は要注意。
2017年当時では、一部の日本酒の瓶の王冠を除いて、ほぼBPAが使われていました。
(現在では、事情が異なっているかもしれません。ご注意ください。)


なぜ日本では、BPAが一般的に使われているのか?

実は、日本国内では、「12カ月以下の乳幼児用の哺乳瓶で、ポリカーボネート使用禁止」とされています。
食品衛生法によって「一日に許容できる量は、0.05mg/kg体重」と示されていて、規制の範囲内であれば、食品の包材として一般的に使用可能なのです。
つまり、フランスやカリフォルニアでは、BPAはクロ(有害)と見なされているのに対して、日本ではグレイ(取扱注意)、となっているのです。

一方で、Amazonでも「BPAフリー容器」がかなり出回っているのでお気づきの方もいらっしゃるでしょう。
そうなんです。
欧州やアメリカの健康志向の人たちは、BPAフリーの水筒、Myボトル、弁当箱、そしてフードパックなどを進んで使い始めています。
日本でも徐々に「BPAフリー容器」が少しずつ浸透し始めているので、注意しておいた方がよいかもしれません。


全世界に広まる、BPA規制~禁止の潮流

海外でのBPA規制の流れは、まだ新しく、最近は特に強まっています。
日本は、その意味では、規制の流れに追随しているように思えます。

BPA規制の波」は、2010年頃、カナダから起こりました。
乳幼児の哺乳瓶への使用が禁止されたのです。
今や、哺乳瓶などへの「規制の波」は、EU、アメリカ、そして日本を含む全世界に広がっています。

そして、2015年、フランスで食品と直接接触する包材の輸入が禁止されました。
2017年、この「禁止の波」はEU全域に広がり、アメリカ(カリフォルニア州)がそれに追随し始めている、というわけです。
EUとアメリカは、世界のトレンド・リーダーですから、この「禁止の波」は、近い将来、全世界にも波及するように思えます。

つまり、日本は、規制~禁止の波の狭間にあり、まず日本食品の輸出がその影響を受け始めている、ということになります。
将来的な波及が予想されるのであれば、事前に準備しておくことは、今後の混乱を避ける上で、大切な打ち手であると思われます。

植草
また余談になりますが、2018年7月17日に、安倍総理は、日本とEUの経済連携協定(EPA)に署名しました。
順調に推移すれば、2019年には、EPAが発効される見込みです。

その結果、

  • 日本の食品の関税が引き下げられる
  • 地理的表示の規制が有効になる

時期を同じくして、ラグビーワールドカップ2019観戦のために、欧米富裕層が来日し、日本食品を試される機会が増えます。
(詳しくは「2019年 ラグビーワールドカップ のインバウンド対策方法」 をご参照ください。)

つまり、日本食品のEU輸出が増える可能性がより高くなっていく、ということになります。

ところが、BPA不使用(BPAフリー)の対応をしておかないと、いざ輸出という段になって、私がつまずいた同じ轍を踏むことになりかねません。

  • 商品規格の確認に時間・コストがかかる
  • 包材変更にコストがかかる
  • 確認・検討に時間がかかり、取引機会を逸してしまう

誰しも、そのような汗と苦労と苦笑いの数カ月を体験したいとは思わないはずです。

既にお気づきのことと思います。
発想を転ずれば、「BPAフリー対応」を上手に活用することもできるのではないでしょうか。

例えば、海外バイヤーとの商談にあたって、「BPAフリー対応」は、競合食品との差別化になります。
商品仕様書に、キーワードとして「BPAフリー対応」をうたうことができれば、BPAに頭を悩ませている欧米バイヤーの興味を引くことになると思います。
また、これから増えてくる欧米富裕層(特に健康志向の旅行者)のインバウンド対策の一つにもなるかもしれません。
ここでも、新しい規制は、商品の競争力に役立てることができる、というわけです。


米国カリフォルニア州への製品輸出については、BPAに要注意!

では、問題のカリフォルニア州の規制について、もう少し踏み込んでみましょう。

2012年、米国食品医療品局(FDA)が哺乳瓶や乳幼児製品へのBPA使用を禁止。
2018年1月から、カリフォルニア州法プロポジション65(安全飲料水および有害物質施行法)の改正が適用されています。
癌または生殖毒性を引き起こす化学品のリスト」には、なんと約1000の化学物質の名前があげられています。
その中に、このBPAが含まれている、というわけです。

ちなみに、これまでは以下のような物質で警告書が出されたケースが多かったようです。

  • 鉛および鉛化合物:
    海苔、海藻、魚介類などに自然に含まれる鉛も対象に
  • アクリルアミド:
    チョコレート、スナック菓子などアミノ酸と糖類が高温加熱されると発生
  • カドミウム:
    魚介類などに自然に含まれるカドミウムも対象

2018年では、BPAの比率が少しずつ高まっている、とのこと。

この州法よると、BPAを含んだ製品を販売・流通させる場合には、

  • 州の指定した警告文を表示しなくてはならない
  • 違反した場合は、1日2500ドル以下の罰金が課せられる

となっています。

しかも、4月19日に、カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)が公表した規制内容は、かなり手厳しい。

「製造業者、生産者、包装業者、輸入業者、販売業者は、小売業者やその委任代理業者に対して、書面による通知を行わなければならない」
(JETROホームページより抜粋)

「警告表示は以下のようになっていなければならない。
WARNING: This product can expose you to chemicals including [name of chemical], which [is/are] known to the State of California to cause [cancer]/[birth defects or other reproductive harm].
For more information go to www.P65Warnings.ca.gov.
(カリフォルニア州ホームページより抜粋)

つまり、
『警告:この製品には、[化学部品名]が含まれており、カリフォルニア州では[ガン/出産障害または生殖毒性]があると知られており、この製品によってあなたは危険にさらされる可能性がある。詳しくは、www.P65Wanings.ca.govを参照のこと』(日本語訳)

8月30日までに、この新ルールに基づいた表示が求められています。
注意すべき点は、自社の知らない流通経路でカリフォルニア州で販売される場合でも、製造業者に警告書が送られるおそれがあること。

公的機関・民間団体・個人などが、対応を怠っている企業を訴えることができる

(JETROホームページより抜粋)

正直に言って「とんでもないこと」だと思います。
対岸の火事のように無関係だと思っていたアメリカ訴訟社会の影響が、ひたひたと迫っているだなんて。
特に、知らない間に、自社商品がアメリカに輸出されていた場合は、要注意です。

ただし、例外措置もあることはあります。

  • 食品容器がOEHHAの指定基準かつ許容レベル以下で安全であること
  • 雇用者数が10人未満の小規模企業の製品であること

となっています。
しかし、健康被害が問題視されているので、いつまで例外扱いなのか、予断を許しません。

また、現状で警告書は、法的対応を取ることができる大手企業に集中しているようです。(2018年7月現在)
しかし、法律で求められている警告表示の対応が漏れている場合、販売会社(例えばアマゾンなど)を含めて、警告書が来る可能性は、全くないとは言いきれません。

あなたが中小食品メーカーであれば、過度に神経質になることはないかもしれません。
しかし、念頭に置きつつ、少しずつでも着実に対処していく必要があると思われます。


食品生産者はどう対応したらよい?



あなたの商品は、米国へ輸出されていますか?

明らかに輸出されていても、人の噂で「アメリカで流通しているらしい」であっても、なるべく早く商流を確認した方がよいかもしれません。
ここで簡単に「商流確認」と申し上げていますが、かなり手間がかかると思われます。

並行して、包材にBPAが使用されているかを確認します。
包材卸を経由するなど、包材メーカーにBPA使用の有無をご確認ください。
こちらも時間がかかるかもしれません。
仮に、厳密な調査分析を求めれば、コストがかかる場合もあります。

いずれしろ、使用されているのであれば、その旨を、輸出先の米国輸入業者や小売店まで周知徹底してもらうよう、お願いする必要があります。
少なくとも賞味期限内で小売店の棚に置いてもらうのであれば、適切な表示をしてもらうように、通知する必要があります。

より専門的なアドバイスを求めるとすると、JETROの現地カリフォルニア事務所に確認した方が良いでしょう。



まだ米国へ輸出していないくても、EUなど海外の販路開拓を志されていますか?

今後、積極的に食品輸出に取り組むのであれば、包材など「BPAフリー」にこだわった方が良いと思われます。
現在は、そこに気付いた食品メーカーが先行し、高いコストを甘受されているのかもしれません。
使用量そして生産量が増えてくれば、全体的なコストも低下し新製品も増えてくると思われます。

一方で、高品質なイメージのある「ガラス瓶やガラス容器」にこだわられている生産者も多いと思います。
問題は、王冠、金属キャップ。
ガラス容器と金属キャップの間の緩衝材に、高い可能性でBPA が使われています。
加熱殺菌処理や充填処理のため、包材に耐熱・耐圧が求められれば、自ずと緩衝材が必要になります。
BPA以外の緩衝材料の選択肢が多いと良いのですが、2017年の時は、選択肢はコルクなどに限られていました。
材質・形状を変えると、とりわけ充填ラインの変更につながり、設備投資が必要になることもあります。

であれば、「あえて発想を変えてみる」という大胆な選択肢もあります。
例えば、欧州やアメリカの食品メーカーでは、あえてBPAフリーのプラ容器を使い、パッケージのデザインで高級感を演出、という対応を始めているところも出てきています。

包材の技術革新を待つか、それともデザインで対応するか。
EUへの輸出を後回しにするか、積極的に攻めていくか。
この2018~2020年は、そのちょうど潮目の変わる時期、意思決定を求められる時期、なのかもしれません。



ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
優れた日本の商材を国内、海外へ。
https://jbmarket.jp

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