海外展示会 、 商談会 の効果的な使い方とは? ( 海外バイヤー からの指摘 )

海外展示会

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

海外展示会 でお目にかかった方々に、しばしば尋ねることがあります。
それは「どんな成果がありましたか?」というシンプルな質問。
これをお読みになっている方も、「そう言えば、そんなこと聞かれたなあ」と思い当たる方もいらっしゃるでしょう。
実は、その質問のきっかけになったのは、とある 海外バイヤー に海外展示会に同行させてもらったためです。
その時に得られた気付きについては、後半にて。


海外展示会における成果とは?

 さて。
展示会での成果」について、サプライヤの方々(生産者や販売者)からの回答では、国内と海外での展示会で、ある異なる傾向がありました。

< 国内の展示会 >

新たな取引先が見つかった。後日、連絡を取る約束をした。

さっそくロット契約につながった。

など、成約に直接つながるような意見が多かったと思います。
率直に言って、悲観的な意見は少ないようです。

ところが、海外の展示会では、少し様子が変わります。

< 海外の展示会 >

初めての出展では、取引先開拓につながらなかった。
2回目でようやくサンプル出荷にこぎつけた。

毎回、交換した名刺は多く、その後のフォローもする。
しかし、具体的な取引になるケースはかなり少ないようだ。

特に初回は展示会に慣れていないこともあり、成果に結びつくケースが少ないようです。
とは言え、初回でもいきなり注文に結び付いた、という成功例も、稀ですが、ありました。

(ご参考)海外バイヤから「商品を輸出して欲しい」と頼まれたら!
初めての食品輸出


この違いは、どこから来るの?

 
「そりゃ、海外展示会だったら、言葉や距離が問題じゃないか」と思われのではないでしょうか。
その通りです。
海外におけるバイヤーとの距離感や信頼感の違いそのものを示しています。

つまり、海外では、

  • 直接話し合う機会が少ない(言葉の壁)
  • 互いに営業訪問することが難しい(距離の壁)
  • 次の機会まで時間がある(時間の壁)

という3つの壁が立ちはだかっている、ということです。

当たり前、と言えば、当たり前かもしれません。
では、どうすれば良いのか。

そのヒントは、実に、海外バイヤーからの教えにありました。


海外バイヤー は展示会をどう活用しているのか?

 冒頭で少し触れたように、海外バイヤー(非日系卸の経営者)に2日間終日、別々の展示会にアテンドしました。
その間にさまざまな質問をぶつけてみました。
(その海外バイヤーとは、親しい間柄なので、以下は本音ベース。)

Q. 展示会へ来る目的は?

まずは、既存取引先との意見交換だ。
そりゃ必要があればスマホですぐに連絡を取ることもある。
でも、テーブル囲んで話すといろいろな情報を聞くことができる。
思いがけず、大きな取引につながることも多い。

 

Q. 既存取引先とはどんな話をするのか?

具体的な商談だ。
味、添加物、ラベル表示の記載内容、パッケージのプレゼンテーション(商品名、棚に合わせた形状、外装、レシピ表示など)。
具体的な取引条件。新商品のコラボなど。

 

Q. 新しい取引先を探さないのか?

取引先開拓は、その次。
アポの合間に興味のある商品を探すこともある。
その時は、取扱いたい商品のテーマを事前に決めている。
それに合わせて出展商品から探す。

 

こんなことも言ってました。

日本の展示会(海外バイヤー向け)は、食品カテゴリではなくて地域に分かれているから探しにくいね。

 

Q. 新規とはどんな商談をするのか?

展示会では名刺交換はするけれど、突っ込んだ商談はしない。
なぜかって?相手を信頼するには時間がかかるからね。
経験と勘だけでも駄目だ。
(サプライヤを)訪問して、会社の状況や働いている人と話すなど確認してからだね。

 

 ちなみに、以上について、他の海外バイヤーにもぶつけて確認してみましたが、興味深いことにほぼ同じでした。

整理してみましょう。
展示会を訪れるバイヤーの目的意識は、主に以下の4点になります。

  1. 新商品の情報収集
  2. 取引先の開拓
  3. 既存取引先との意見交換
  4. 取引に向けた商談

 
だいたいの傾向は、国内バイヤーは主として(1)(2)、海外バイヤーは(3)(4)。
要するに、この目的の傾向に合わせた、対策を打つことで成果が上がりやすくなる、ということです。


展示会ブースのテーブルの意味は?

 さきほどの海外バイヤーが私に指摘したことで、特に印象に残っている言葉があります。

ヒロ、展示会ブースの後ろにテーブルがあるだろ。あれは何のために使うのか、知っているか?

あれは、出展者の休憩や事務のためじゃない。
商談のためだ。
そのために、俺たち(バイヤー)は事前にアポを取って来ているんだ。

 
 そう、海外バイヤーは、展示会の前の段階で担当者とのやり取りの大半を済ませておきます。
展示会は、直接会って確認したり調整したりする機会として利用します。
そこでの試食・試飲も、そこから引合いを始めるのではなくて、取引前の確認作業の一つに位置付けられています。

実はね、展示会でこれはイケる、と感じて取り扱った商品ほど、失敗することが多かった。

だから展示会の前から、取扱い商品のテーマを見定めるんだ。

 

 参考までに、一般的なバイヤーの行動は、以下のような行動の結果として展示会に臨んでいます。(国内も海外も)

  • 「(仮)商品会議」にて流行りそうな商品への入替えを検討(定番を除く)
  • 商品と市場の調査分析
  • ネット検索、実店舗訪問でのロングリスト洗出し
  • 展示会での発掘(試飲・試食・取引先開拓)、ショートリストへ絞り込み

 
 要するに、準備段階にあたる「プレ展示会」が重要だということ。
海外バイヤーの場合は、言葉と距離と時間の壁があるため、展示会(=確認・商談の場)に向けて、より周到に準備しておく必要があるのです。


2018年4月30日更新(2016年11月1日公開)
 

ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
優れた日本の商材を国内、海外へ。
https://jbmarket.jp

初めての食品輸出
海外進出
日本の食品輸出EXPO