海外の展示会や見本市、あるいは国内での 商談会 などで、初めての海外バイヤとの商談に臨まれる方にとっては、慣れないことの連続でしょう。
例えば、商談会での商談は通常40分~1時間と短期決戦です。
慣れない英語、通訳を介してのやり取り、言いたいことは山ほどあるのだけれど、伝わらない。
もどかしいったら、ありゃしない。
そう思われる方も多いはず。
しかも、短時間の中で、価格やロットだけでなく、さまざまな取引条件にまで話が及びこともあります。
その時間配分、回答いかんによっては、商談そのものも流れてしまう。
実は、商談にも勘どころと仕掛けが必要なんです。
海外バイヤが商談のテーブルに着くには、必ず理由があります。
そして、商品だけでなくあなたにも興味がある。
彼らが知りたいのは、
- 会社や商品ならではのストーリー
- 売り手(あなた)の信頼度
- そして、取引条件
少なくとも、この3つなのではないでしょうか。
これをいかに的確に示し納得してもらうのかが、商談成否のカギになります。
初回の商談とは言え、プロのバイヤは、第一印象で取引相手としての評価を下してしまいます。
(私たちも大抵、そうじゃありませんか?!)
商談会 での進め方
通常は、以下を手渡しておいて商談に臨みます。
- 会社パンフレット
- 商品パンフレット
- 商談シート
前向きな海外バイヤであれば、当然、事前に目を通していることと思います。
時間配分としては、だいたい以下を想定しておいてはいかがでしょう。
商談時間40分であれば、「(1)会社・商品のストーリー」に前半戦20分をかけます。
その間で、互いに挨拶を交わし、バイヤに商品や会社のこだわり、あなたの人となりを知っていただきます。
いったい何が相手に響くのかを、相手の反応(ちょっとした表情や一言など)を見ながら探り、強調したり説明を深めていけばよいでしょう。
しかし、本当のコツは、商品をあらかじめ絞っておくことです。
できればイチ押しが望ましい。
相手が最も関心を持っている商品に集中し、まず取引をまとめます。
(その他の商品は、「事後」関係を深めながら、取扱商品数を広げます。)
例えば、説明途中でも相手から質問や意見を受けたりすることがあります。
すると、前半20分はあっと言う間に過ぎてしまいます。
ポイントは、後半戦20分をどう使うかです。
質疑応答だから、相手の知りたいことに答えていけば良いじゃないか!と思われるかもしれません。
そのための商談シートを使えばいいじゃないか!と仰るあなた、その通りです。
この質疑応答で、いかに「(2)信頼度」と「(3)取引条件」を納得していただくか。
一般的な商談シートだけでは、前向きなバイヤに納得してもらうには不十分な場合があります。
例えば、バイヤの立場に立ってみると、この特別な「商談」という時間を共有しながら、「自分にとっての特別なメリット」を探しています。
日本流に言えば「手土産」です。
スーベニアならもちろん用意しているよ!と、思い浮かべることでしょう。
しかし、海外バイヤも商売人、品物への感謝はほぼ一瞬のこと。
やはり、「商売に役立つ情報や好条件」を求めています。
取引は、初回の商談の時から始まっている
「相手が取引に対して前向きだな」と判断したのなら、後半戦では取引条件について切り出してもよいでしょう。
商談シートに記載されていること以上に、具体的な取引条件について触れることができれば、次のステップへの確度が高まります。
実は、1対1での商談で、海外バイヤが確認したいのは、最終的な契約につながる取引条件であり、それを先回りして想定している周到さ(=信頼度)です。
想像してみてください。
商談がうまく行った暁には、
- サンプル品(有償・無償に関わらず)を渡し、
- 商品の仕様や営業の手法などについて相談し、
- ロット・価格以外の貿易条件を決め、
- 契約を締結し、
- 取引を開始します。
ところが、膝を交えて商談ができる機会は、あまりありません。
通常は、メールやFAX、あるいは電話・Skypeでのやり取りになってしまいます。
しかし、メール・FAX・電話・Skypeなどでは、相手の表情・感情をつかめません。
だからこそ、初回とは言え、対面の場を大切にしたいものです。
相手を見極め、契約の条件をできるだけ煮詰めていく。
もちろん、最終的な取引には、日本側の商社に仲介してもらう場合や、海外バイヤが使っている商社を経由する場合もあるでしょう。
その場合でも、商談は、取引相手同士のお見合いです。
短時間の中で、できるだけ相手の気持ちを握り、互いの信頼度を高めていきましょう。
仲人や仲介を誰がするのか、という手続き上の問題とはレベルが異なり、当事者同士にとって、人としての関係は、より重要なことなのです。
取引条件とは、具体的にどんなこと?
取引条件には、いろいろな項目が含まれます。
例えば、英文契約書には、通常、以下のような取引条件が記載されています。
- 契約日
- 取引当事者の会社名・所在地
- 商品(名称、型番、単位、数量、仕様、品質)
- 注文手続き
- 取引条件(例:FOB船便甲板渡し、EXW出荷工場渡し、等)
- 価格・決済条件(決済通貨、支払タイミング、支払方法)
- 保険、検査・クレーム、保証条件、知的財産権
- 契約期間
- 契約解除
- 不可抗力
- 秘密保持
- 通知
- 一般条項(準拠法、紛争解決など)
< 後半:定型条件 >
英文契約書は、一見とっつきにくいです。
英語ですし。
しかし、基本さえ押さえてしまえば、実はほとんど定型です。
そして、英文契約に慣れている弁護士に任せてしまった方が簡単。
私のおススメは、国内商社に間に入ってもらうこと。
そうすれば、このような英文契約を直接交わすことはないと思います。
(いわゆる「間接貿易」というやつです。)
商談ツールとしての「セールス・ポリシー」
商売に必要なのは、前半部分の取引条件です。
こればかりは、弁護士に任せるわけにはいきません。
そして、この部分こそが、初回商談のときの強力なツール(=武器)になるのです。
つまり、商談ツールの一つとして、事前に取引条件を記載したものを用意しておく。
(「セールス・ポリシー」(=取引方針)と呼びます。)
それを商談後半の際に、相手に「特別に」手渡す。
この「セールス・ポリシー」には、日本語・英語が併記されています。
海外バイヤは手慣れていますので、この「セールス・ポリシー」をちらりと見れば、あなたが取引相手として「手固そうだ」と思うでしょう。
ちなみに、この「セールス・ポリシー」は、展示会や見本市で不特定多数の方に配布するものではありません。
あくまで、1対1の商談の際に、相手を見て、提示するものです。
この「セールス・ポリシー」は、その後の取引交渉でも重要になってきます。
上手に活用できれば、「交渉材料」にもなります。
続きは、次回「(2)商談でのクロージング」にて。
2018年6月11日更新(2016年11月13日公開)
ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
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