海外進出 ・ 販路開拓 マニュアル (2) 顧客を探す ( 市場調査 )

市場調査
市場調査

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前回では、「(1)まず決意から」 というお話をしました。
次に行うことは、「商品を買っていただける顧客」を見定めること、つまり「 市場調査 」になります。
既に、海外に顧客がいる場合には、その市場をさらに深掘りしていけば良いと思います。
問題は、まだ海外に顧客がいない場合です。
どこに売り込めば良いのか?と悩まれると思います。

これまでの海外旅行や海外出張で、ある程度の土地勘をお持ちであれば、それに頼るのも一つの手法です。
しかし、ちょっとお待ちください。
「商品ありき」でターゲットとなる国や顧客層を選ぼうとしていませんか?
もちろん、ここで、やれ「プロダクトアウト」だとか、「マーケットインが大切」だとか、申し上げるつもりは、まったくありません。ご心配なく。(苦笑)
なぜなら、商品を見てもいない顧客のニーズをつかむことはできないからです。
仮に、有識者や専門家に聞いてみても、その方の「感覚」「考え方」に頼ることになるだけで、顧客のホンネとは違うかもしれません。


市場調査 の2つのアプローチ

かんたんに言えば、2つのアプローチがあります。

  1. (積極策)まずターゲットとなる国を決めて、テスト販売
  2. (インバウンド活用)急増している外国人旅行者を活用する

「(1)積極策」は、従来通りの正攻法と言ってもよいかもしれません。
海外進出のための情報収集から初めて、ターゲットとなる国を調査。
場合によって、海外に出向いていくことも。
そして、海外バイヤーが集まる展示会や商談会を積極的に活用。
お金もかかりますが、自ら動くことで活路を開く、というやり方です。
積極的に討ってでますので、それなりの出費を覚悟しないといけません。

「(2)インバウンド活用」は、「仕掛けて待つ」やり方というべきかもしれません。
日本と日本人とメイド・イン・ジャパンに憧れる人は少なくありません。
私たちと同じ「こだわり」や「感性」を持つ人が、世界にはいます。
そのような人と、流行りのSNSや口コミを活用して出会うのです。
そして、客が客を呼び、その国にニーズを作り出すのです。

「そんな簡単にはいかないだろう」
「だいたいどうやって外国人を誘客できるんだ?」

その通りです。
インバウンド活用は、「待ち」の戦略です。
少し例えが荒っぽいですが、「釣り」に似ています。
「(1)積極策」よりコストがかかりません
「(1)積極策」とは異なる時間と手間と根気が必要です
また、日本に、自社に居ながらにして、少しずつ無理なく進めることができる、そこがメリットかもしれません。
その効果は、「(1)積極策」でなかなか得られない「知名度」を少しずつ蓄積すること。
その限界は、「(2)インバウンド活用」だけでは、海外取引先を開拓できないこと。
やはり、途中から「積極策」のように展示会・商談会の機会を活用すると良いでしょう。

私のおススメは、この二つを並行して行うことです。
それぞれの良いところ取りをするのです。

しかし、それぞれのやり方も、奥が深い。
ここからは、正攻法である「(1)積極策」からお話ししたいと思います。
「(2)インバウンド活用」については、以下できめ細かく連載していますので、ご参考ください。

inbound


仮に、ターゲットは、どの国ですか?

さきほどのように、まず「商品ありき」の思い込みを避けていただいた上で、ある程度、ターゲットを絞り込むことを考えてみてください。

仮に、皆さんの商品は、どの国で売れそうでしょうか?

「そりゃ、 爆買い している中国や韓国じゃないのか」
そう、思われる方もいると思います。
しかし、本当に中国や韓国で良いのでしょうか。
それとも、 親日 のヨーロッパ、特にフランス・イギリス?
むしろ、経済成長著しく、親日でもある中東やインド?

様々な生産者にお聞きすると、以下の点を考慮されているようです。

  • 既に使っている顧客がいる国
  • 親日の国、訪日する 外国人旅行者 が多い国
  • 所得水準 が高い
  • 現地の言葉を使える人が身近にいる

「既に海外に顧客がいる」のであれば、ラッキーです。
その国には、商売の機会がありそうです。
親日、訪日客数が多いことも、重要でしょう。
日本の商品に思い入れのある、親日バイヤがいると思われます。
日本の商品の価格は、海外現地では2倍以上になる可能性があります。
ですから、顧客層の所得水準の高さにも留意する必要があります。

そして、言葉としての外国語。
商談、契約、クレーム処理など、言葉と距離の問題は必ず付きまといます。
ただし、取引の間に国内商社が入ってくれれば、言葉の壁も低くなります。

どのようにターゲットとなる国と顧客層を絞り込むべきか。
まずは、情報収集から着手しましょう。


すぐにもできる、海外市場の情報収集とは?

情報収集で頼りになるのは、まずやはりJETRO(日本貿易振興機構)でしょう。
既に、ご利用されている方には、お馴染みかもしれません。

これまでの日本経済発展の成長エンジンは、一言で言えば「貿易」。
国際的な大企業も、苦労を重ね何十年も掛けて、海外に進出しました。
そのノウハウと情報を、JETROが、ほぼ無料で提供してくれます。
これを利用しない手は、ありません。
もったいない!

JETROは、各都道府県の県庁所在地にオフィスがあります。
すぐ電話を掛けて出かける前に、まずお手元のパソコンやスマホなどを活用しましょう。
JETROのホームページには、ありとあらゆる有益な情報が公開されています。
このホームページは、様々な情報に満ち溢れています。
いきなり立ち入って戸惑う方もいると思います。

そこで、まずネット動画から視聴されてはどうでしょうか。
「一見は百聞にしかず」、です。

ネット動画「世界は今 – JETRO Global Eye」
※ データ量が大きいので、なるべくWifiのある所で視聴した方が良いと思います。(通信コストにご注意ください。)

例えば、「海外では抹茶がウケる?ウケない?でもご紹介しました。

JETRO_Global_Eyes_20160127

「世界は今」の内容は、各国の市場や流行、中小企業の海外進出の成功事例、輸出の注意事項、など様々な切り口で取材した内容が網羅されています。
興味のある国、自社の商品カテゴリなど、テーマを定めてご覧ください。


そして、海外進出に関するセミナーに参加する

まとまった情報収集のためには、JETRO、自治体、金融機関などのセミナーや講演会を活用するのも良いと思います。
JETROは、セミナーや講演会の開催情報をネットで公開しています。
JETROイベント情報(特にセミナーや講演会など)

専門家の意見を直接聞くことができる絶好の機会です。
何より、ほとんど無料です。
ネットから簡単に申し込むことができます。
特に「各国の日本食品市場の動向」などは、現地アドバイザーの生の声が参考になります。

「東京開催が多いのだろ。遠くて行けない。」と思われた方に朗報です。
セミナーや講演会のネット視聴が増えてきました。
(主として東京会場のイベント)

プレゼン資料を事前にダウンロードしておき、開始時間でリアルタイムに視聴することができるようです。
おかげで、交通費・宿泊費がかからず、とても便利になりました!

セミナーや講演会に直接参加できるのであれば、講師や参加者と積極的に名刺交換などの交流を深めてください。
同じような問題意識を持っている方に巡り会えることでしょう。
海外進出も例外ではなく、ご縁を通じてさまざまな商売の機会を得ることができることと思います。


課題や問題点が見えてきたら、専門家支援制度を活用する

徐々に海外進出の方針や課題・問題点が見えてきたら、直接、専門家に相談してはいかがでしょうか。
最寄りのJETRO事務所(各都道府県にあります)に気軽に電話しても良いでしょう。
JETRO相談窓口一覧

そして、より専門的な相談や支援が必要であれば、次の制度を活用します。
専門家相談・支援 「新輸出大国コンソーシアム」

「新輸出大国コンソーシアム」では、個別分野での専門家によるサポートを無料で受けることすらできます。
例えば、個別具体的な海外市場へのアプローチを検討する、商談・契約などの事前相談を受ける、など。

もちろん、担当される専門家の経験値によるところも大きいでしょう。
そのため、課題や問題点をよく見定めてから、専門家サポートを受けることがポイントだと思います。

次回は、「展示会・商談会の活用方法」について、お話ししたいと思います。

展示会・商談会

ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
優れた日本の商材を国内、海外へ。
https://jbmarket.jp

富裕層の所得水準
初めての食品輸出
外国商標 と 冒認登録