FDA査察への対処 (3) 査察リハーサル

FDA査察への対処 (3) 査察リハーサル
FDA査察への対処 (3) 査察リハーサル

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査察日の約1.5カ月前に、 査察リハーサル を受けました。
FDA査察の前に査察手順の一連の流れを予行します。
いわゆる「摸擬査察会」というもの。
これによって、具体的な課題を抽出し、対応することができるようになります。

 

Day-63:FDAの査察出張コーディネーターからのメール

査察日から2ヶ月前に、今度は、査察出張コーディネーターから問合せメールが来ました。
その内容とは、以下のようなものです。

  • 査察担当官が決まったこと
  • 宿泊ホテル
  • 送迎の確認
  •  ホテル~工場の送迎は、当初のCompany Profileで「対応可」と回答していました。

  • 通訳手配の依頼

この最後の、通訳手配については、Company Profie(Day-140)、査察日通知(Day-78)にて、「こちらで手配できないので、USFDAにて手配されたい」とその都度、回答。
しかし、これで3度目の打診。
そこで、「残念ながら、手配できません。USFDAにて手配ください」と、やんわりと、しかししっかりとお断りしました。

それ以外の項目については、了解した旨の英文回答を用意し、担当者からお送りいただきました。

 

Day-43: 査察リハーサル

FDA査察の前に、専門会社に査察リハーサルを行ってもらいました。
詳細は、割愛させていただきますが、以下のような内容でした。

査察リハーサルの概要
  1. 査察手順の一連の流れをレクチャー
  2.  ミーティング、工場周辺および工場内部の査察、質疑応答、レビュー

  3. 現場の査察
  4.  実際に、製造工場の内外、特に原材料の保管場所などを視察・確認
     指摘を受けそうな箇所について、その場で指摘を受け、対処を検討

  5. 食品安全に関わる各種資料や記録簿の確認</li>
     ISO22000と米国FSMA(食品安全強化法)における管理項目の相違点

  6. リハーサルの簡易レビュー
  7.  査察までに解決・準備すべき課題を列挙

 

また、FDA査察以外の観点でも、米国への食品輸出にあたっての注意事項を確認できました。
例えば、カリフォルニア州法におけるBPA(ビスフェノールA)規制など。
米国への食品輸出の場合、カリフォルニア州で販売される可能性もあるため、事前に包材原料の確認をしておいた方が良い、というもの。

BPAについては、和心品質でも整理しています。以下を参考にしてください。

BPA Free green

査察リハーサルの簡易レビューでは、特に重大な指摘事項はなく、より軽微な指摘事項をきちんと対応しておけばOK、とのご意見をいただきました。

念のため、この査察リハーサル結果については、査察日23日前に一覧として整理していただき、あらためてフィードバック・セッションを受けることになっています。

 

査察リハーサルの結果を受けて

さて、査察日までに入手すべき情報(原材料のSDS(製品仕様書)など)、工程管理表への項目追加、規定など資料の整備など、かなりの作業が必要であることがわかりました。

そのため、その一つひとつに漏れなく対応するために、「課題管理表の導入」を提案させていただきました。
特に重要な項目について、私の方で叩き台としての例を作成し、それ以外の項目を担当の方に追記していただく、という段取りにしました。

対処すべきプライオリティを、S(最優先)、A(優先)、B(普通)、C(時間があったら対応)の4つに分けました。
Sについては速やかに対応し、Aの期限を摸擬査察会のフィードバック(DAY-23)まで、Bの期限を査察日(DAY-0)まで、としました。

課題管理表とは

課題管理表は、とてもシンプルです。
一見、何の変哲もない、ただのTo-Doリストに見えます。
実は、使い方に特徴があり、いわゆるプロジェクト進捗会議で効力を発揮する、とても効果的なプロジェクト管理ツール。
ありとあらゆるプロジェクト、小規模から大規模なものにも活用できる管理表です。
単なるTo-DOリストを超えて、課題や対処方法を見える化し、プロジェクト参加者をどんどん巻き込んでいくところがポイントです。

今回は、短期間で数十項目の課題に対応するために、あえて導入させていただきました。

査察リハーサル以降、資料の英語化に本格的に取り組みました。
まず、「(2)FDA査察ガイドブック」に推奨されている資料の英語化を行いました。
既にISO、HACCPを想定した各種規定が作られていたので、新たに資料を作成することはほぼありません。
但し、英語化にあたって、なるべくFDAの使用している英語表現に合わせるように工夫しました。

例えば、ISO22000では、PRP(前提条件プログラム)として、食品安全の前提となる衛生管理を文書化しています。
これは、少し手を加え、HACCPプランとして、FDA監査でも重点的にチェックされる内部管理資料になります。
ところが、このPRPという言葉は、FSMAでは使われない概念・用語であることがわかりました。
そのため、あえて「一般衛生管理プログラム General sanitation control program (PRP)」と銘打つことにしました。

 

Day-36:課題管理表の内部レビュー

課題管理表をすべてレビューし、作業内容と担当者の確認を行いました。
この後、6日前までを含めて、3回ほど進捗状況を確認し、作業の分担や期日などを見直していきました。
担当者の飲み込みも早く、あっという間に課題管理表を使いこなしました。
課題の数も、当初は18項目でしたが、最終的には58項目にまで増えました。
それでも、その各項目に社内での役割分担と対処期限が付けられて、重大な漏れもなく対応されました。
担当者は、自信をもってFDA査察に対応することができたように思えます。

 

Day-23:査察リハーサルのフィードバック

専門会社から査察リハーサルのフィードバックを受けました。
詳細なレポートを頂戴し、その内容を午前・午後に及びました。
特に、ハザード分析表リコール計画書については、米国FSMA(食品安全強化法)の条文に紐づけて、具体的な法的要件を説明をいただいたのが、とても参考になりました。

講評としては、全体的に大きな問題になりそうな点はない、とのこと。
新たに指摘を受けた項目については、上記の課題管理表に追記し、対応することになりました。

ちょうどその日に、査察出張コーディネーターから、査察官が宿泊するホテルについて連絡がありました。
その際に、また、「通訳は必要?」と4度目の打診があったため、丁重にFDA側にて通訳を手配していただきたいと重ねてお願いしました。

何とか査察日までに準備が間に合いそうだと思っていたところ、この後、FDAからとんでもないメールが届いたのです。(続く)

 

ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
優れた日本の商材を国内、海外へ。
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