海外進出 ・ 販路開拓 マニュアル (4) 展示会・商談会 の アフターフォロー

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「展示会・商談会の秘訣は、 アフターフォロー にあり」と聞かれることが多いと思います。
国内取引の場合、展示会で名刺交換した後で、取引契約を結び、取引口座を作り、発注手続きを確認する、という一連の流れが必要になることもあります。
海外バイヤとの取引の場合は、国内取引と異なるでしょうか?
基本的な点では同じだと思います。
しかし、対面の際に「なるべく詳細を詰めておくこと」が肝要。
そして、重要なポイントは、相手の信頼性を見極めることです。
ここでは、積極的にやり取りしながら、この一期一会の機会を活用する方法についてご説明します。


一般的な アフターフォロー とは

通常、以下のような対応が望ましい、とされています。

一般的な アフターフォロー(国内バイヤ-を対象)
  1. 会期終了3日後までに、サンキューメールを送付
    その際に、商品カタログや価格表をPDFで添付
  2. 2~3週間後、検討状況をメールあるいは電話で確認
  3. 3か月後、新商品やイベントなど新しい動きを紹介
  4. 次回の展示会あるいは類似の展示会の1カ月前に、出展のご連絡をメールで通知・招待券を送付


この中でも(1)が大切であり、中には展示会終了が金曜日であれば、月曜朝までには必ずお送りする、という方もいらっしゃいました。


アフターフォローは、会期中から始める!

一方で、海外バイヤーとの展示会や商談会では、少し様相が異なります。
というのも、日本国内と違って、なかなか対面する機会がないからです。
私のおススメは、海外バイヤーと初めてお会いした、その時から、アフターフォロー を始めることです。
「会期が終わって、名刺を整理しながら」という一般的なアフターフォロー、とは少し異なります。

ポイントは、海外バイヤーとの会話とやり取りを次へ次へと継続していくことです。
例えば。
展示会での立ち話、テーブルを囲んだ商談30分、たぶん、その間に決めきれないことがあると思います。
であれば、それを会期中に回答する。(なるべく)
難しければ、会期後にすぐに回答する。(なるべく)
とにかく、やり取りを継続することで、海外バイヤーの関心を途切れさせない、ことです。

「そんなに会話は続かないよ!」
そう思われる方もいらっしゃるでしょう。

商品に関する話題でも、以下のようなものがあります。

やり取りを継続させるためのネタ(対 海外バイヤー)
  • 商品のこだわりストーリー
  • 国内の評判、海外での評判、SNSで取り上げられた事例
  • 価格表。相手からボリューム・ディスカウントを要求されたら、数量スライドの価格表
  • サンプル送付
  • 新商品の予告


言い換えれば、「海外バイヤーから宿題をもらうこと」なのです。
海外バイヤーから宿題をもらうことを恐れず、積極的にその機会を活用してみてください。

相手が取引に前向きなのであれば、会期中に、2度・3度とお会いする機会を作りましょう。

本当に良い相手であれば、「特別対応(special treatment)」であると伝えても良いかもしれません。
盛り上がれば、ランチやディナーを共にしても良いかもしれません。
言葉の問題は、社内あるいは知り合いの方に同席してもらって対処してください。
私も良く陪席させていただくことがあります。

また、最近では、なるべく展示会・商談会で、ご一緒に記念写真を撮ることをおススメしています。
せっかくのチャンスです。
写真を撮ることで、商談のさまざまな気持ちと記憶を、スナップ写真として残し、これも後ほどメールしてあげるのです。

ありとあらゆる機会を活用して、互いのやり取りを継続する努力を惜しまないようにご注意ください。
それこそが、取引のコツだと思います。


会場でサンプルをお渡しすべきか?

以下では、食品分野のサンプルについてお話しします。

注意したいのは、サンプルとかさ張る紙カタログ・パンフレットです。
展示会・商談会では、海外バイヤーは、さまざまなサンプル品や書類を数多くもらいます。
しかし、すべてスーツケースに詰めることはできません。

ちなみに、会期間中、海外バイヤーは、移動と会場内の視察で1万歩程度を歩きます。
ゴルフで言えば、コースをカートに乗らず歩くようなもの。
それを連続2~3日間続ける強者もいますが、結構な運動量になります。

そのため、海外バイヤーによっては、重いサンプルを別送にしたり、懇意にしている国内商社と一緒に回り、サンプルを国内商社に預けて、まとめて送ってもらう人もいます。
いずれにしろ、重いサンプルとかさ張る書類を避けて、軽いサンプルと数枚のパンフレットをお渡しするだけにとどめた方が良いでしょう。
書類は、PDFにしてメールで送ってあげれば、良いのです。


海外バイヤから「サンプルを送ってほしい」と依頼されたら

バイヤーによっては、サンプルを送ってほしい、と依頼されることもあるでしょう。
サンプルを送らせる目的は、大抵、以下のようなものだと思います。

食品サンプルを送る目的とは
  1. 品質確認:海路を船便輸送した後の、品質確認
  2. テスト・マーケティング:海外バイヤが、自分の取引先に試用してもらい売り先確保
  3. 社内手続きのため:海外バイヤが、自社の商品会議での評価に使用


特に、こちら側の輸出経験が少ない場合、海外バイヤは、商流・物流を確認するためにも、サンプル出荷を求めてくることがあります。
「船便輸送で品質が変わらないか、心配だから」と、言ってきます。

この場合、サンプル送付を受けたとしても、「サンプルだから、無料で送りましょう」と安易に回答しない方が良いと言われます。
仮に無料にするにしても、サンプル代と輸送費を頂戴して、「正式な初回出荷の取引金額から、サンプル費用を割り引く」位にしておいた方が良いと思います。

サンプル品だからといって、インボイスに「価値ゼロ」と書かないでください
また、「サンプル品で価値ゼロ」とインボイスに記載した場合、相手国の税関で「税金逃れ」と看做され通関に手間取る、というトラブルに巻き込まれることがあります。
ご注意ください。

重要なのは、「(2)テスト・マーケティングに使いたい」と言ってきた場合です。
なるべく、配布先を確認しつつ、商品に対する意見をできるだけフィードバックしてもらうようにしましょう。
場合によっては、仕様そのものを見直す必要が出てくるかもしれません。
その点を考慮いただき、前広に対応いたしましょう。


初回取引の後で、現地視察を!

初回取引の後で、できれば、現地を視察してみた方が良いと思います。

食品であれば、現地輸入卸から、どのような販売店やレストランに流通しているか、を自らの目で確かめると良いでしょう。

また、現地での販売支援を前提としている海外バイヤもあります。

現地販売支援の際に説明を求められること
  • 商品の使い方
  • 品質のこだわり
  • 競合品との違い
  • 伝統・歴史・文化・地域などのストーリー


そうした、日本人ならではの説明を求められることが多くなりました。

場合によっては、レストランを訪問して、実演したりアドバイスを与えることも必要かもしれません。
その場合は、間に入ってもらった輸入卸や商社は、進んで付き添ってもらえることと思います。
なぜなら、彼らにとっても、日本から生産者に来てもらい、店舗に案内するのは、顧客サービスの一環だからでしょう。

ところで、海外バイヤの方々が、ほぼ口にされるのは、以下のような意見です。

メイド・イン日本の商品は、同じようなものが、少なからず流通している。
ブランド品なら良いが、さもなければなんらかの差別化が必要
(台湾の海外バイヤー)

棚に置いも、顧客が手に取って試してもらえなければ、広がらない。
まずは、生産者みずからが、現地で試してもらうよう努力すること。
実演販売、試用、試飲・試食
例えば、年に2回でも販売支援してもらえる商品は、継続的に売れている。
(タイの海外バイヤー)

もちろん、現地のフリーペーパーや新聞に広告・宣伝を打ったり、定期的に現地セールスを使って販促を掛けることも可能でしょう。

しかし、一番効果的なのは、やはり、生産者が、自ら現地で消費者相手に実演販売したり、現地のレストランを廻って商品説明をすることなのだと思われます。
そのような努力の積み重ねが、一回だけの取引で終わることなく、継続的な取引につながっていくのだと思います。

いかがでしょうか。
「もう既にやっているよ!」という方も多いと思います。
皆様のヒントになることがあれば、幸甚です。


ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
優れた日本の商材を国内、海外へ。
https://jbmarket.jp

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