インバウンド を 商売 に活用 (3) こだわり外国人旅行者 どう動く?

こだわりの外国人旅行者
こだわりの外国人旅行者

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前回 「(2) 外国人旅行者 が求めるものとは?」 では、最後に アジアの 観光先進国 であるタイと日本の 観光コンテンツ を比較しました。
「そもそも、タイだけじゃ、そこまで言い切れないだろう?」
そう思われる方もいらっしゃると思います。
私も、例えば、日本とゆかりの深いイギリスだったらどうだろう、と考えました。
ちなみに、イギリスは、タイと同様、人口は日本の約半分です。

そこで。
イギリスと日本を比較してみました。


イギリスと日本の観光コンテンツの違いとは?

これについても、「トリップアドバイザー」で、確かめてみました。
https://www.tripadvisor.jp/

その結果は。


(クリックするとPDFが開きます)

やはり、予想通りでした。

  • 名所、観光スポット、自然 : 日本はイギリスの約3倍
  • 屋外アクティビティ、ツアー : 日本はイギリスの1/3以下
  • 娯楽施設 : なんと名所、観光スポットよりも多い

イギリスを訪れたことのある方なら、自然の美しさ、歴史のある観光名所の多さをご存知かと思います。
日本と同じ島国であり、大英帝国時代からの「観光先進国」は、名所・観光スポットの宝庫。
それでも、イギリスの体験型コンテンツは、名所・観光スポット・自然の約4.5倍
彼らは、上手に名所・観光スポットを活かし、体験型コンテンツに仕立てているようです。

イギリス、タイに比べて、日本は、体験型コンテンツが不足している。
外国人旅行者からすると、どう思われているでしょう。
彼らのホンネは、「行きたくても行くところがない」、「楽しみたくても楽しむものがない」ということなのではないでしょうか。

ここのところが、統計データでは、見えないところ、「 潜在的ニーズ 」だと思えます。

2018年の首都圏白書でも、「 体験型消費 の拡大が望ましい」と指摘されています。

  • 外国人旅行者の一人当たり支出額が伸び悩んでいる
  • ナイトライフ体験に対する不満が高くなっている
  • 体験型消費の拡大が望ましい

2018年6月8日 日経新聞より
「夜間消費拡大で経済のさらなる活性化を」
出典: 「首都圏白書」

結論。
観光先進国であるタイやイギリスを見習って、外国人旅行者を対象にした体験型コンテンツをもっと開発すべきなのだと思います。
そして、さらに一歩進めてみれば、外国人旅行者に商品を買ってもらいたいのなら、「商品と体験型コンテンツも併せて、開発した方が良い」のかもしれない、のです。

では、どのような体験型コンテンツが、外国人にとって好ましいのか?
その点について、外国人旅行者の考え方に踏み込んで考えてみましょう。


外国人旅行者と日本人の考え方の違いとは?

さて、外国人旅行者の特徴とは、何でしょうか。

調べてみると、「訪日経験のある外国人」と日本人の生活意識の違いについて、博報堂が、大変興味深い調査結果をまとめています。

博報堂「訪日経験のある外国人の生活意識」

  • 66.3%(46.3%)「楽しさ、面白さを求め、生活をエンジョイしたい」
  • 58.2%(43.2%)「人間関係を重視していきたい」
  • 57.9%(30.8%)「新しい人と出会うことは楽しい」
  • 55.4%(42.2%)「自分の思い通りの生活をしたい」
  • 47.4%(37.7%)「仕事よりも、生活を楽しむことを重視したい」
  • 45.5%(14.9%)「自分の人生の計画をきちんと立てるほうだ」

※ 訪日経験のある外国人比率。カッコ内は日本人の比率。
※ 特に、日本人と比べて特徴的なものをピックアップ

(出典:木戸良彦「超日本製品論」)

いかがでしょう。
ずばり、「興味の追求」「自由行動」「新しい人との出会い」「計画性」などの特徴が挙げられています。
日本人と比べて、「個人的なテーマを追求する外国人旅行者の姿」が透けて見えてくるのではないでしょうか。


「 こだわりの外国人旅行者 」の行動パターン(例示)

お気づきのように、都心ばかりか、地方でも、外国人を見かけることが多くなりました。
もちろん、日本で働いている人も多いのですが、明らかに旅行者も多くなってきました。
身軽な外国人パックパッカーがスマホを見ているところや、タクシー乗り場にスーツケースを持った外国人が待っている光景もちらほらと。
彼らは、団体ツアーではなく、その多くが「個人手配旅行」で来日しているようです。
自分で航空券を手に入れ、宿泊先を予約し、自由に日本国内を移動しているのです。

もちろん、日本でも「個人手配旅行」を楽しむ方が増えていると思います。
では、外国人旅行者の場合は、どのように動くと思われますか?

「地方を旅する外国人」は「こだわりの旅行テーマ」を持って、日本を訪れます。
ここでは、様々な外国人にヒアリングした「個人手配旅行の組立て方」を一例としてご紹介いたします。

個人手配旅行の組立て方(ヒアリングより組み立て)
    < 来日前。計画準備 >

  • 国、旅行テーマ :旅行メディアや口コミ(SNS)等でテーマを思いつく。
  • 滞在エリアを絞る:テーマに合わせて検索、ブログ等を参考。
  • 宿泊先と交通手段:予算から宿泊先を決めて、空港からのアクセスを確認。
  • 予算に合えば予約:旅行会社や旅行情報サイトを使用。
    < 来日。日本にて >

  • 通貨両替    :カード決済、スマホ決済できないところがあるため。
  • 通信・通話   :SIM入手。(あるいは世界対応のAppleSIMなどを使用)
  • 現地で調べて訪問:ホテルのコンシェルジュ、旅行者案内所で相談、検索。
  • 体験後に発信  :写真・動画の撮影。自撮り。おもしろネタをSNSへ投稿。
    < 帰国後 >

  • レビュー投稿  :旅行会社・旅行情報サイトからレビュー依頼が来て投稿。
  • 知り合いに伝える:自分の体験を友達・家族に披露。
  • 次のテーマ計画 :リピートするかも含めて検討。


 いかがでしょうか。
「自分でも同じことをしているな」と思われる方もいらっしゃるのでは。

彼らは、「計画準備」に、あれこれ楽しみながら数か月を掛ける、とのこと。

長期休暇が終わった瞬間から、次のテーマに向けて準備を始めるんだ
(スイス人)

そして、「こだわりの旅行テーマ」を持って来日する場合、日本人ですら知らないスポットも調べて訪問します。
それぞれの国に、「日本の旅行」を取り上げた旅行メディアがあります。
また、日本語のホームページを読みこなす外国人も増えてきました。

スマホのAI翻訳機能で、日本語ページをまるごと翻訳できるよ。
だから、だいたいの意味をつかむことができる

(台湾人)

彼の場合は、あまり一般的ではないのかもしれません。
しかし、スマホに手慣れた外国人であれば、言語の壁は、それほど高くないのかもしないのです。


こだわりの旅行テーマとは、どんなもの?

まず、外国人に人気のスポットととして、

  • 伏見稲荷大社
  • 白川郷
  • サムライミュージアム
  • 渋谷スクランブル交差点
  • フクロウカフェ、サル居酒屋、猫カフェ

などといった「おもしろネタ」「動物ネタ」は、”鉄板ネタ”です。

ところが、最近の各国SNSを見ると、体験テーマ(ものづくり、酒造り、農業体験)といった、よりディープなものに広がっているようです。
(各国SNSについては、後ほど、ご紹介します。)

例えば、新潟県・燕三条地域の「工場の祭典」は、町の工場(こうば)が中心となり、地元の酒蔵を巻き込み、海外の旅行者をも集客しています。

(ご参考)新潟県・燕三条地域の「工場の祭典」
日本の魅力 発見プロジェクト~vol.3 新潟県 燕三条~

燕三条は、ひとつの例です。
中小企業が守り続けた「こだわり」は、それをおもしろいと思う日本人、そして外国人を惹き付けているように思います。
その「こだわり」「おもしろさ」を発信すれば、一部のファンがまず動きます。
そして、同じ「こだわり」を持つ外国人が、同じ感動を求めて、海山を越えてやってくるのだと思います。

「インバウンド、そして口コミを商売に活用」は、一見遠回りのようです。
しかし、こうして辿り着いたファンと友好を育てることが、資産になります。
大企業がやりにくい「個人のつながり」によって、ファンがファンを呼ぶのです。

そのためには、何が必要でしょうか?
まず、外国人の方が日本を「おもしろい」と思うように、私たちも彼らを「おもしろい」と感じて、温かく受け入れてあげることが「肝」だと思います。

(ご参考)「体験型観光コンテンツ」の素材を一覧にしてみました
Tourism Attraction

次回は、さらに「 こだわり外国人旅行者 の 集客方法 」に踏み込んでいきたいと思います。

こだわり外国人旅行者の集客方法



ライター: 植草 啓和(JBマーケット)
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